不安神経症とは、特別な理由がなく強い不安を感じてしまう病気です。同じような状況に直面しても、多くの人が特別な不安を感じることはないのに、不安神経症の方は不安で混乱してしまったり、なんとなくいつも不安を感じていたりします。
不安神経症という言葉は、現在、不安症あるいは不安障害と表現されることが多く、急性症状のパニック障害と慢性症状の全般性不安障害とに分類されています。
不安神経症では、不安や恐怖を強く感じ、身体症状も現れ、日常生活にも影響してきます。他の人には、何にそんなに不安を感じているのか理解してもらえないこともあります。
そのため、より不安を感じてしまい、悪循環となります。不安神経症の方は、不安を感じそうな状況や場所を避け、行動範囲を狭めてしまいがちです。
不安神経症の方は、大きな不安を感じているうえに、身体症状の発現や周囲の無理解などに苦しまれていることでしょう。
しかし、不安神経症は適切な治療をすることで治りやすい病気とも言われています。症状の改善に向けて、焦らずできることから少しずつ始めてみましょう。
不安神経症を治すためには、不安神経症の症状・原因・治療について知ることが大切です。このページでは、不安神経症を治したい方のために、不安神経症の症状・原因・治療について詳しく説明しております。
【目次】
1.不安神経症とは
不安神経症とは、不安な感情が強すぎ、日常生活に影響を及ぼす病気です。不安という感情は誰もが経験するもので、不安の理由がはっきりしているのですが、不安神経症では、具体的な理由がないにもかかわらず強い不安を抱いてしまいます。
不安神経症は、男性より女性の方が多く、年齢的には20~40代が多いということです。
現在、神経症という言葉はあまり使われておらず、不安神経症は不安症や不安障害と表現されています。不安神経症はアメリカ精神医学会の「精神障害の診断と統計マニュアル(DSM)」で「パニック障害」と「全般性不安障害」に分類されました。
不安神経症のうち、パニック障害は発作的に強い不安を感じる急性症状で、全般性不安障害は不安な状態が長期間続く慢性症状です。
2.不安神経症の症状
不安神経症の症状は、一言で言うと極度の不安を感じることですが、その不安のためにさまざまな身体症状も現れます。普通の不安感情と不安神経症の境目を判断するのは難しいのですが、日常生活に支障をきたしている場合は不安神経症の可能性があります。
急性の症状であるパニック障害と慢性の症状である全般性不安障害に分けてご説明します。
(1)パニック障害の症状
突然生じるパニック発作がパニック障害の特徴です。パニック発作の症状としては、動悸、息苦しさ、震え、しびれ、発汗、めまいなどがあります。
パニック発作は数分ほどでピークに達し、死を感じるほどの恐怖感がありますが、数十分程度で治まります。重症の場合は、2日に1回くらいの頻度で繰り返します。
パニック発作は強烈なため、またいつこのような状態になるかわからない、一人のときに発作が起こったらどうしようという不安を感じます。これを「予期不安」と言います。
一人で出かけることが怖くなったり、逆に人混みの中や逃げられない場所に入ることを恐れたりすることがあります(広場恐怖)。そのため、発作が起こった場所や状況を避けるようになります(回避行動)。
パニック発作が繰り返し起こり、パニック発作が起こるかもしれないという不安が1カ月以上続くと、パニック障害と判断されます。
(2)全般性不安障害の症状
不安感が長く続き、落ち着かない、眠れない、動悸、めまい、疲労感などの症状があり、常に緊張状態にあります。これらの状態が長く続くため、うつ状態を引き起こす場合もあります。パニック発作は起こりません。
ものごとに対する強い不安が6カ月以上続きます。不安が長く続くため、何か作業をするにしても集中できません。特定の対象だけに不安を感じるのではなく、一つのことが解決しても対象が変わっていきます。
全般性不安障害を発症した人はパニック障害の3~4倍とも言われています。
3.不安神経症の原因
不安神経症の原因は、ストレス、環境、性格、遺伝が考えられます。
大きなストレスやとなるできごとや、あるいは周囲からは気にするようなことではないと思われるようなことでも、ストレスを感じやすい人にとっては不安神経症を引き起こす原因となりうるのです。
性格上、不安を感じやすい人は、ささいなことがきっかけで不安神経症を発症する可能性があります。
- 心配性
- こだわりが強い
- 完璧主義
- 神経質
- 感受性が強い
(1)パニック障害の原因
パニック障害を発症する人は、何か心に引っかかる大きなできごとを経験しているケースが多いということです。幼いころの虐待や少年期の喫煙、アルコール・カフェイン・鎮静薬などが原因となることもあります。
また遺伝的な要素も原因と考えられ、近親者にパニック障害を発症した人がいる確率が高いようです。
(2)全般性不安障害の原因
はっきりとした理由がなく、あらゆるものごとが不安を感じる対象となります。原因は特定されませんが、不安を感じやすい性格や、ストレスなどが影響していると考えられます。
4.不安神経症の治療
不安神経症の治療を行う前に、身体疾患がないか確認をします。不安神経症と思われる症状が見られ、尿検査・血液検査・X線検査・心電図・超音波検査などで異常が認められなければ、不安神経症と診断されます。
不安神経症の治療は、主に薬物療法と心理療法を行います。どちらか単独で行われる場合もありますが、薬物療法と心理療法を併用した方が効果が高いと言われています。また、日常生活の見直しも症状の改善に役立ちます。
(1)薬物療法
・抗不安薬
即効性がありますが、効果は一時的で、依存性の副作用があります。緊急対応として使います。
・β遮断薬
震えや動悸などを抑えますが、効果は一時的です。
(2)心理療法
カウンセラーと話し合い、不安を感じるものごとへの考え方や行動を修正していきます。
・認知行動療法
不安のメカニズムなどを学習し、自分の感じている不安がどのようなものかを把握します。どのように行動したら良いかを検討し、実行に移します。
・暴露療法
不安を強く感じそうな状況にあえて対面し、混乱せずに行動できるよう繰り返しトレーニングして、不安を感じにくくしていきます。
・自律訓練法
自己暗示でリラックス状態を作り出します。
(3)日常生活の見直し
薬物療法や心理療法を行いながら、日常生活も工夫をして少しでも不安を軽くしましょう。
- 十分な睡眠
- 栄養バランスの良い食事
- 適度な運動
- 腹式呼吸
- 趣味によるストレス解消
不安神経症は強い不安感をいだき、身体にも症状が現れてしまうため、日常生活に支障をきたします。不安を感じる対象がわかりにくいため、より不安や恐怖を感じ、行動範囲も狭まってきます。
しかし、不安神経症はしっかりと治療をすれば治りやすい病気と言われています。不安というものは誰にでもある感情ですので、生活に影響しない程度にコントロールしていきましょう。どうぞあきらめないでください。