メニエール病は、めまいや耳鳴りを症状とする耳の疾患です。フランスの耳鼻科医メニエールの名前が由来となっていますが、かつては脳出血の症状のひとつとされていました。メニエール病が、国内で特定疾患に指定されたのは1974年のことです。

メニエール病は男性よりも女性が発症する割合が高く、30歳代以降から50歳代が中心となっています。めまいや耳鳴りが持続する長さや程度は人それぞれですが、反復するという特徴があります。

症状を同じくする病気は複数ありますので、一定の基準に応じてメニエール病と診断されるまでに検査を重ねることになります。とくに脳血管系の緊急を要する疾患も、似たような症状を示しますので注意が必要です。放置すると重症化することになりますので、早めの受診が得策です。

メニエール病を治すためには、メニエール病の症状・原因・治療について知ることが大切です。このページでは、メニエール病を治したい方のために、メニエール病の症状・原因・治療について詳しく説明しております。

1.メニエール病とは

メニエール病とは、耳の奥にある内耳(ないじ)部分に関する疾患です。内耳にある三半規管(さんはんきかん)や耳石器(じせきき)は、バランス感覚を保つために重要な役割をはたしています。

メニエール病は、それらの器官がある内耳を循環する内リンパ液が増えすぎて、水ぶくれになっている状態です(内リンパ水腫といいます)。他にリンパ液が関係するものとして、外リンパ瘻(ろう)がありますが、こちらは穴が開きリンパ液が漏れ出る疾患です。

どちらにしてもリンパ液は、適切な量が一定に保たれる必要があります。液体の均衡がくずれると本来の働きができず、平衡感覚に狂いが生じてしまいます。そうして、めまいや耳鳴りなどの症状が出現することになるのです。

2.メニエール病の症状

メニエール病の症状には、主に回転性のめまいや耳鳴りがあります。軽いめまいは、例えば貧血や疲労の蓄積などで、しばしば起こりがちです。とくに女性ですと、月経の影響で経験している方は多いでしょう。

症状の特徴としては、瞬間的にくらっとする一過性のめまいとは違い、短くても10分ぐらいから数時間は持続するものです。症状が強い場合は、ぐるぐる目がまわるほど激しく、気分が悪くなり嘔吐することもあります。

めまいの発作が起こる際に、前兆が見られるケースがあります。人により、起こりやすい状況や傾向がありますので、ご本人には「めまいが起こりそう」と自覚できることが多いようです。

具体的な症状としては、意味もなく冷や汗が出てきたり、気分が悪くなる、動悸がする、耳の閉塞感(へいそくかん:耳をふさがれた感じ)や耳鳴り、難聴(とくに低い音域で)、頭痛がする、じっとしているのにフラフラする(傾斜感や浮遊感)などです。

メニエール病は、生命を脅かす類の疾患ではありません。症状が軽いと、ありがちなものとして捉えてしまう傾向がありますが、そのままにしておいても自然に回復するわけではないのです。しだいに症状も重くなり、ただ立っているのもつらいなど、生活に影響が出てきます。

3.メニエール病の原因

メニエール病の原因は、内耳で内リンパ液が増えすぎることです。内リンパ液が増え、内耳の圧力が高まっているのがメニエール病の状態です。なぜリンパ液の調整がきかなくなるのか、その生理的な原理は解明されていません。産生量が増えるのか、吸収が悪いのかも不明です。

本来、内リンパ液と外リンパ液は働きも違うため、膜によって隔てられています。内耳圧が高まることにより膜が破れ、性質の違うこれらのリンパ液が混在してしまいます。このことが、めまいや耳鳴りの症状を引き起こす原因となるのです。

メニエール病でお悩みの方が多いのは先進国です。そのことから、原因となっている背景にストレスの存在が考えられます。メニエール病には心因的要素が関与していると、複数の医療研究者も示唆しています。

現代の社会でストレスが蓄積するのは、ある程度、仕方のないことです。過労や睡眠不足、とくに働きざかりの30歳代以降ですと、仕事に対する重い責任もあります。社会が複雑になると人間関係についても神経質になってしまいます。

感情を抑制すると、いつのまにかストレスが溜まっている状況に陥りやすくなります。ホルモンのバランスが崩れたり、自律神経の不調、アレルギー疾患など、原因の特定できない調子の悪さを抱えている方は多いでしょう。

このような中でメニエール病を発症していても、全体的な不調と相まって、診断の特定が遅れるケースもあります。ストレスは、ご自分でも気づかないことも多く、周囲に指摘されて初めて医療機関を受診する方も少なくないのです。

メニエール病にかかりやすい方の気質にも、ひとつの傾向があります。前述しましたストレスに対して耐性が少ない方です。性格は、几帳面でまじめすぎる、細かいことにこだわりを持ちすぎる、完璧を求めてしまう、くよくよと悩んでしまうといった面々です。

このような気質が、必ずしもメニエール病の原因に直結しているとは言い切れませんが、リスクをはらんでいることを認識されるのは大切です。精神面に負担をかけないことが、要因を遠ざけることにつながるのです。

4.メニエール病の治療

メニエール病の治療には、まず対処療法として薬物を適用します。めまいや気分の悪さ、頭痛や耳鳴りなど、直面しているつらい症状をとりあえず抑えて、平常心で通常の生活ができるようにする必要があります。

めまいの発作に対しては、抗めまい薬があります。症状がひどく、嘔吐や吐気もある場合は、まず安静にする必要があります。内服薬よりも、即効性のある点滴の投与や注射が適しているといえます。

発作の際に服用する吐き気止めや抗めまい薬は、発作の前兆を感じたら、すぐ服用するのが効果的なタイミングです。また頻繁にめまいの症状が出る方には、内服薬ではなく「神経ブロック療法」という方法もあります。

メニエール病では、内リンパ水腫によって水分バランスが崩れています。利尿薬を使用し、体内の水分を排出することで適正な状態に調整し、内リンパ水腫を軽減させます。また、むくみを取り除く効果がある血流改善薬を使用するのも有効です。

難聴や耳鳴りの症状では、聴力を改善させるためにビタミン剤が用いられます。また内リンパ水腫により末梢神経が障害を受けている場合は、ビタミンB12が細胞の代謝を促してくれます。

内リンパ嚢(のう)の詰まりをなくし、リンパ液の排出を促す外科手術の治療法もあります。しかし最近では、この方法はあまり適用されず、薬物療法などを優先させるのが主流となっています。

先にも述べました通り、メニエール病は精神的なストレスに起因するケースもみられます。治療では、ストレスの原因を追求し取り除くことが目的となります。心理療法や行動療法といった精神科の領域となります。

日常生活における食事や生活習慣の見直し、人間関係や仕事での柔軟な思考や処世術を身に着ける、趣味を充実させる、楽天的な考え方を取り入れるなど、生きていく上で肯定的になれる工夫をするのも、広い意味での治療となります。

メニエール病は耳の疾患ですが、耳鼻科医院の領域にとどまらないものです。治療は長期におよぶこともあるでしょう。しかし地道に続けることで改善できます。どうぞあきらめないでください。