耳管開放症は、一般的にはあまりよく知られている病気ではありませんが、最近は増加傾向にあります。
耳管開放症とは、耳管が開いたままの状態になり、耳閉感(じへいかん:耳が詰まった感じ)や自声強聴(じせいきょうちょう:自分の声が大きく響くこと)などの症状が出ることです。
耳管は通常は閉じた状態で、あくびや物を飲み込むなど、中耳の圧を調節する必要があるときのみ開き、またすぐに閉じます。しかし、さまざまな原因で耳管が閉じることができず、開いたままの状態になると、不快な症状が現れます。このような状態が長く続くと精神的にも影響してきます。
耳管開放症は、急激な体重減少、ストレスや疲労、睡眠不足、妊娠などが原因となって起こりやすいと言われています。耳管開放症は男性よりも女性にやや多くみられます。
耳管開放症は、軽い初期段階であれば、生活習慣の見直しなどで自然治癒することもあります。
耳管開放症を治すためには早期治療が大切です。耳管開放症を早期治療するには、耳管開放症の症状・原因・治療について知ることが大切です。このページでは、耳管開放症を治したい方のために、耳管開放症の症状・原因・治療について詳しく説明しております。
【目次】
1.耳管開放症とは?
耳管開放症とは、必要なとき以外は閉じていなければならない耳管が開いたままの状態にあるために、さまざまな症状が現れることです。耳管とは、鼻咽腔(びいんくう:鼻の奥)と中耳腔(耳の奥)をつないでいる管で、中耳を守るために通常は閉じています。
耳管は、あくびや物を飲み込む、飛行機に乗る、高山に登る、エレベーターに乗るなど、中耳の圧調節が必要なときのみ開いて換気しますが、すぐに閉じます。耳管が閉じていることによって、鼓膜の振動は安定し、鼻咽腔から中耳ヘの雑菌の侵入を防ぐ役割も果たしています。
ところが、さまざまな原因で、耳管が開いたままの状態である耳管開放症になると、耳閉感(耳が詰まった感じ)や自声強聴(自分の声が大きく響く)、呼吸音が聞こえる、中耳炎を起こすなど、不快な症状に悩まされます。
高低差のある所を移動し、気圧の変化があると耳が詰まった感じがしますが、通常はあくびや唾を飲み込むことで、解消されます。耳管がきちんと機能している証拠です。
しかし、耳管開放症では、耳管が開いたままになっているので、呼吸のたびに鼻咽腔から中耳へ空気が流れ、鼓膜の内外で気圧差が生じます。そのため、耳が詰まった感じや自分の声が大きく響くなどの症状が現れるのです。
2.耳管開放症の症状
耳管開放症の症状として特徴的なものがいくつかあります。耳管開放症の症状は、臥位(がい:寝ている状態)より立位で現れやすく、また激しい運動をした際に現れやすいと言われます。
(1)耳閉感
耳管開放症では、耳管が開いたままになっているため圧の調節ができず、耳閉感(耳が詰まった感じ)があります。唾を飲み込んでも耳抜きをしても治らず、耳閉感は続きます。
(2)自声強聴
自分の声が大きく響きます。耳元で話しかけられているような状態で、自分の声が中耳に直接響いてくるため、耳管開放症の症状の中で最も辛い症状であると言えます。自分の声が大きく聞こえるため、相手の言葉が聞こえにくくなり、会話に支障が出ることもあります。
(3)自分の呼吸音が聞こえる
声を出さないときは、自分の呼吸音が聞こえます。
(4)頭を下げて下を向くと症状が治まる
頭を下げると、耳管周辺の血管が膨張し耳管を圧迫して狭くなるため、耳閉感や自声強聴が軽くなります。入浴中や横になったときも同様です。この現象は、耳管開放症の特徴で、この現象がみられると耳管開放症と診断されます。
また、鼻をすすると一時的に症状が軽くなることがありますが、鼻咽腔の雑菌が中耳に入り、中耳炎を引き起こすことがあります。そのため、耳管開放症がある方は、鼻をすすらないよう気をつけましょう。
他に、めまい、頭痛、肩こり、鼻づまり、音程がずれて聞こえるなどの症状が現れることもあります。
3.耳管開放症の原因
(1)急激な体重減少
無理なダイエットや心疾患・がん治療などによって急激に体重が減少すると、耳管周りの必要な脂肪まで減ってしまい、耳管が開いたままの状態になります。耳管開放症の原因では、体重減少が一番多いと言われています。
(2)ストレス
ストレスにより自律神経のバランスが崩れたり、血行が悪くなったりして耳管の機能低下を起こします。
(3)疲労・睡眠不足・栄養不足
疲労や睡眠不足が続いたり、偏った食事によって栄養が不足したりすると、耳管周辺の血行が悪くなり、耳管の機能が低下します。
(4)妊娠、ピルの服用
妊娠すると、ホルモンバランスの変化によって耳管開放症が起こることがあります。妊婦の約5人に1人の割合で、耳管開放症の症状が出ると言われていますが、一時的な症状であり、大半は出産後に回復するので、あまり心配する必要はありません。
4.耳管開放症の治療
耳管開放症は、症状が軽いうちは自然治癒が望めます。そのための生活指導があり、経過を観察します。できるなら、外科的な治療ではなく、自然治癒力で治したいものです。
耳管開放症の症状に気づいたら早く原因を突き止め、軽いうちに治療を開始しましょう。
(1)ダイエットを控える
急激な体重減少が原因である場合は、適正な体重に戻し、耳管周辺の脂肪の減りすぎを修正します。
(2)ストレスを解消する
ストレスや睡眠不足が原因である場合は、休養をとり、バランスの良い食事や軽い運動などで、リラックス、リフレッシュしましょう。耳管開放症の症状でさらにストレスを感じることもありますが、悪循環となりますので、趣味などで気分転換を図りましょう。
(3)水分を積極的にとる
血流を良くするために水分補給も大切です。
(4)耳周辺を温めたりマッサージしたりする
耳の周辺を温め、血行を良くします。耳の後ろにある骨(乳様突起)の後ろをマッサージすると症状が治まったという報告があります。
(5)横向きに寝る
仰向けより横向きになった方が、耳管が閉じやすいので、就寝時は横向きに寝るよう心がけましょう。
(6)漢方薬
1~2週間で症状の改善がみられます。
(7)生理食塩水を点鼻して耳管に注入する
中等度の症状では、下記のような治療法を試みます。
- 耳管にルゴール液を注入する
- 鼓膜チューブを入れる
難治性の症状には
- 耳管周辺に脂肪を注入する
- 経鼓膜的にシリコンを注入する
などの方法があります。
原因となる病気がある場合は、その病気の回復とともに耳管開放症の症状もよくなる傾向があります。
鼻をすすって一時的に耳管開放症の症状を軽くしようとすると、中耳炎にかかる可能性があり、治療が難しくなりますので、耳管開放症がある方は鼻をすすらないよう気をつけましょう。
耳管開放症は、症状が軽い場合、生活改善などで自然治癒することも多くありますが症状が重くならないうちに、早く治療を始めることが大切です。耳管開放症は、適切な治療を行えばよくなる病気です。どうぞあきらめないでください。