前庭神経炎は、強い回転性のめまいが起こる疾患です。吐き気をともない嘔吐する場合もあります。症状は数日に渡って続くこともあり、つらいものです。発作がおさまってもフラついた感覚が後日しばらくは残る可能性があります。
前庭神経は、耳の奥にある内耳に存在する部位です。身体がどのような平衡感覚の状態にあるのか、その情報を脳に伝える役割をもっています。名前の通り、前庭神経が炎症を起こすことで前庭神経炎は発症します。
突然に起こるめまいには、危険な種類のものもあります。前庭神経炎は命にかかわる疾患ではありませんが、激しいめまいを感じたら、すぐに対処することが肝心です。めまいの種類によって、どのような症状が併発するのか事前に認識しておくと良いでしょう。
前庭神経炎を治すためには、前庭神経炎の症状・原因・治療について知ることが大切です。このページでは、前庭神経炎を治したい方のために、前庭神経炎の症状・原因・治療について詳しく説明しております。
1.前庭神経炎とは
前庭神経炎とは、平衡感覚に係わる前庭神経が炎症を起こすことにより生じる、激しいめまいの疾患です。前庭神経は、耳の内部にある内耳から脳へ向かう場所に位置します。しかし、難聴や耳鳴りといった聴くことに関する症状は出ないのが特徴です。
めまいの程度は強く、また持続性があります。嘔吐や気分の悪さも伴いますので、安静にしていてもつらい状況となります。一度の発作で症状が数日間続くこともありますが、おさまってしまえば再発する可能性は低いといえます。
回転性のめまいで重要なのは、脳内の血管に異常が起きて生じる脳梗塞や脳出血といった重篤なものでないかという診断です。他にも耳の疾患であれば、突発性難聴ですと速やかに治療を開始する必要があります。とりあえず早急な診察をするのが得策です。
2.前庭神経炎の症状
前庭神経炎の症状では、非常に激しい回転性のめまいが起きることです。前兆があるわけではなく、また一過性のものではありません。
歩行するのも難しくなり、フラつくことによる転倒に気をつける必要も出てきます。
症状が持続するので、気分が悪くなり嘔吐することも少なくありません。ご本人や周囲の方々も驚いたり、あわてたりすると思われますが、命の危機にさらされる種類の疾患ではありません。
前庭神経炎は、症状が出現した最初の段階が最も強いといえます。発症した当日とその翌日ぐらいは安静にする必要があります。人により程度はありますが、2~3日から一週間前後で、めまいも収束していきます。
強いめまいの症状はおさまっても、微かなめまいや浮遊感は数か月にわたって残る場合があります。しかし他のめまいに見られるような、発作を何度も繰り返すということがないのが、前庭神経炎の特徴です。
よくある前庭神経炎の症状として、眼振(がんしん)があります。眼振は外部から観察したときに、患者様の視線がひとつの方向へ水平に動いているという症状です。検査をする際に眼振が起きているかを診るのが、別の疾患との見極めポイントのひとつとなります。
3.前庭神経炎の原因
前庭神経炎の原因は、明確には解明されていないのが現状です。ただ前庭神経炎を発症した方々が、その数日前にウイルス性の感染症や血行障害をわずらっているケースが見受けられます。
そのことから、これらの影響で前庭神経炎が生じるのではないかと考えられています。
原因として具体的には、カゼやインフルエンザ、おたふくかぜ、ヘルペス、食中毒などウイルスを介した感染症です。また、もともと血流が悪く、血行障害がある方などが発症する確率も高くなっています。
直近ではない過去に何らかのウイルス感染症にかかった経験がある場合も、前庭神経炎を発症する原因となります。体調が回復しても、いったん感染症にかかってしまうと、ウイルスは体内に潜んでいる可能性が高いのです。
おとなしくしていたウイルスは、免疫力や体力の低下といった身体が衰弱することをきっかけに、再び活発になることがあります。ウイルスが活動を始めると前庭神経が損傷を受け、前庭神経炎の原因となるのです。
4.前庭神経炎の治療
前庭神経炎の治療では、安静にすることが求められます。
重症の場合は、激しいめまいと、それに誘発されて起きている嘔吐感や気分の悪さ・精神の不安定などを取り除くことが優先されます。まずは平静な状態でいられるよう対処するのです。
前庭神経炎は、引き金となったウイルス感染症や血流障害などからの二次的な疾患といえます。元となった症状をきちんと治癒させることも大切です。対処療法とあわせて、根本的な治療も考慮していきます。
(1)薬物療法
前庭神経炎で生じる症状に対し、有効な薬物があります。まず抗めまい薬は、内耳や脳周辺の血流を良くする効能があります。ただし消化器系の弱い方は副作用が出る可能性があります。
別の抗めまい薬で、前庭神経の血流改善に加え、脳へ伝達する神経作用を正常な働きに整える効果が期待できます。副作用の割合は低いのですが、口の渇きや食欲がなくなる、また持病で緑内障や前立腺肥大症のある方は注意が要ります。
(2)理学療法
前庭神経炎のめまいには、理学療法も有効な選択肢となります。平衡訓練(リハビリテーション)は定期的に行うことで、めまいに対してある程度の耐性を身につけることができます。平衡感覚を鍛え、回転やふらつきが出にくくするのです。
リハビリテーションは、専門医師の指導を受けることが大事です。安易に考え、我流で適当に行っても効果が得られるものではありません。怪我をしたり悪化をまねくことは避けたいものです。
(3)原因となっている疾患の治療
ウイルス感染症や血行障害などの疾患が完治していなかったことが、前庭神経炎を引き起こしたそもそものきっかけです。とくにウイルスは、治まったようで体内に潜伏していることが多いものです。
一度、感染してしまうと完全に排除することは難しいとしても、活発化しないよう気を配ることはできます。疲労が溜まったり別の疾患で体力が奪われた時など、ウイルスは動き始めますので注意をしましょう。
前庭神経炎は、発症したら体に堪えますが、再発することはない疾患です。日頃から、適度な運動と栄養を考えた食事をして、一定の健康状態が保てるようにする事が重要です。どうぞあきらめず、治療に集中してください。