騒音性難聴は、別名を職業性難聴と言い、音響外傷の一つです。騒音の下で長時間作業をしたり、長時間音楽を聴いたりすることで起こる慢性の難聴です。難聴を起こす原因がはっきりしており、どのような人が発症しやすいのか明確です。

騒音性難聴は、早期発見・早期治療をすることが大切です。騒音性難聴を発症している方は、騒音の環境にいることが習慣となっているため、難聴になっていることに気づきにくいことが問題です。

騒音性難聴の症状・原因・治療について知ることは、騒音性難聴を治すためにとても大切です。このページでは、騒音性難聴を治したい方のために、騒音性難聴の症状・原因・治療について詳しく説明しております。

1.騒音性難聴とは

騒音性難聴とは、大きな音が原因で起こる難聴のことです。常に騒音に囲まれて仕事をしている方が発症しやすい難聴です。

工事現場、工場、ライブハウス、パチンコ店のスタッフ、音楽演奏家などに発症しやすいと言えます。

また、ヘッドホンやイヤホンで長時間音楽を聴く方、ライブハウスによく行かれる方なども発症する可能性があります。

難聴の種類は大きく分けて3つあります。

  • 伝音性難聴:外耳や中耳に異常があり、音がうまく伝わらない
  • 感音性難聴:内耳に異常があり、音を感じる能力に問題がある
  • 混合性難聴:伝音性難聴と感音性難聴が混在している

騒音性難聴は、3タイプのうち感音性難聴に該当し、内耳に異常が生じることで起こります。騒音の環境に慣れてしまっていたり、やむを得ずその環境の中で仕事をしなければならなかったりするため、本人が自覚しにくく、慢性化することが多い病気です。

騒音のある職場では特殊健康診断が行われています。職場の騒音が原因で難聴となった場合は、労働者災害補償保険法による補償が行われています。騒音環境下で仕事をされる方は、騒音性難聴を発症する可能性があることを知っておく必要があります。

そして、会社も個人でも、騒音性難聴を予防する手段を講じなければなりません。

2.騒音性難聴の症状

騒音性難聴の症状には、難聴、耳鳴り、耳閉感(じへいかん:耳が詰まった感覚)があります。

難聴だけの場合や、耳鳴り、耳閉感を伴う場合など個人差もあります。多くは耳鳴りから始まり、両耳に症状が出ます。

左右で音の聞こえ方が違ったり、音が重なって聞こえたりすることもあります。

騒音性難聴の症状の特徴として、高音域である4,000ヘルツ周辺の音が聞き取りにくいことがあげられます。これは騒音の種類には関係ないと言われます。高音域の難聴の段階では自覚がありません。しかし、難聴が進行してくると、会話域まで達し、日常生活に支障が出てきます。

騒音性難聴では軽度の難聴が多く、本人は気づかず周囲の方から指摘される場合もあります。軽度難聴の段階では、人と向かい合って会話をするには不自由は感じません。しかし、騒がしい場所や少し離れた場所での呼びかけに気づかないことがあります。聴力検査で25デシベル以上が聞こえないと軽度の難聴であると診断されます。

騒音性難聴に気づかないまま、あるいは軽い難聴だからと放置して、騒音環境を改善しないでいると、時間とともに中等度、高度の難聴まで進行していきます。40デシベル以上で中等度、60デシベル以上で高度の難聴と診断されます。次第に大声を出してもらわないと聞こえないようになります。

騒音性難聴の症状は、音が聞こえにくいだけではなく、言葉を聞き取りにくいということがあります。このため言葉を聞き間違うことがあり、会話の中で勘違いや誤解が生じる原因にもなりえます。

騒音性難聴の症状が軽いうちは自覚することが難しいため、騒音環境下に長時間いらっしゃる方は、定期的に聴力検査を受けるなど、日頃から耳に意識を向けておきましょう。

3.騒音性難聴の原因

騒音性難聴の原因は、日常的に大音量の環境下にいることです。85デシベル以上の大きな音を長時間聴き続けることによって、内耳にある感覚細胞が障害を受けるのです。

また、低音より高音の方がダメージを与えやすいと言われています。

工事現場、工場、パチンコ店、ライブハウスなどで働く方、ヘッドホンやイヤホンで長時間音楽を聴いている方は、騒音性難聴になる可能性があります。

内耳の蝸牛(かぎゅう)という部分に、有毛細胞(ゆうもうさいぼう)という感覚細胞があります。この有毛細胞は音を受け取り、電気信号に変換して脳ヘと伝える役割があります。有毛細胞は、継続的な大音量により傷つけられると、再生することができず減少していきます。

有毛細胞が減少することにより、送られてきた音を十分に受け取ることができず、脳ヘも音を断片的にしか送ることができなくなります。このことにより、音が聞こえにくい、言葉が聞き取りにくいといった症状が出ます。

同じ騒音の環境下にいても、騒音性難聴を発症する方と発症しない方がいらっしゃいます。個人差もありますが、低血圧の方、中耳炎を発症したことのある方、ストレプトマイシン注射をしたことがある方、頭部打撲の経験のある方などは、騒音性難聴を発症しやすいと言われています。

また、直接的な原因ではありませんが、騒音性難聴を発症する誘因と考えられるものがあります。

  • 過労
  • 精神的ストレス
  • 睡眠不足
  • 飲酒
  • 激しい体の揺さぶり

このような状態で大音量の音楽を2時間以上聴き続けると、騒音性難聴を発症しやすいと言われています。騒音性難聴はロック難聴と呼ばれることもあります。ロックコンサートに行くときや楽器の演奏をするときは、体調を整え、スピーカーに近づきすぎないよう心がけましょう。

4.騒音性難聴の治療

騒音性難聴の治療は、早期対応が有効です。大音量が原因で難聴となった場合、早期発見をし、早期治療を行えば回復する見込みがあります。

難聴の程度が軽ければ、1~2日で回復することもあります。循環改善薬などを用います。

重症化した場合には、入院して点滴や高圧酸素療法などを行うこともあります。

しかし、騒音性難聴を軽度のうちに自覚することは難しく、自覚症状が現れたときにはすでに進行していることもあります。難聴発症から時間がたつほど回復は難しくなります。放置することが一番よくありません。

騒音環境下で過ごすことが多い方は、自覚症状がなくても定期的な検査を受けて早期発見につなげましょう。

騒音環境を避けられない方は、難聴にならないよう予防することが何より大切です。騒音性難聴になりやすい環境にいるということを、日頃から意識しておくことが、予防につながります。

また、騒音性難聴を発症して、難聴が慢性化している方は、補聴器の助けも受けながら、それ以上の進行を食い止めなければなりません。工夫をして予防や進行防止に努めましょう。

  • 耳栓をして作業をする
  • 可能な限り、騒音環境の場所から離れ耳を休める
  • ヘッドホンやイヤホンで長く音楽を聴き続けない
  • 過労、睡眠不足を避ける

騒音性難聴は、早期発見・早期治療をすれば回復することができます。騒音環境下で過ごすことが多い方は、騒音性難聴になりやすい環境にいることを自覚することが必要です。

定期的な検査を受けることや、作業・生活の工夫をすることで、予防や早期発見、進行防止につながります。どうぞあきらめないで実践してください。