アトピー性皮膚炎とは、かゆみのある湿疹が長期間続く皮膚疾患です。最近はアトピー性皮膚炎を発症する方が増加傾向にあり、20歳以下の有病率は10人に1人と言われています。
アトピー性皮膚炎は、家族性があり体質が関係していると言われています。発症しやすい体質に環境や刺激物質などが関与し、アトピー性皮膚炎を発症すると考えられています。
アトピー性皮膚炎は、よくなったり悪くなったりするため、途中で治療をやめてしまう方もいらっしゃいます。しかし、治療の中断は症状の悪化や感染症・合併症の発症につながる可能性があります。
アトピー性皮膚炎は根気よく治療を続ける必要がありますが、症状が治まってくればスキンケアだけで過ごすこともできるようになります。
アトピー性皮膚炎を治すためには、アトピー性皮膚炎の症状・原因・治療について知ることが大切です。このページでは、アトピー性皮膚炎を治したい方のために、アトピー性皮膚炎の症状・原因・治療について詳しく説明しております。
【目次】
1.アトピー性皮膚炎とは
アトピー性皮膚炎とは、かゆみのある湿疹がよくなったり悪くなったりの状態を繰り返す、慢性の皮膚疾患です。
かゆみのある部分をかくと皮膚に傷ができて痛みも出てきますし、皮膚のバリア機能が低下し、さらに症状が悪化しやすくなります。
アトピー性皮膚炎を発症する方の多くはアトピー素因(アレルギーを起こしやすい要素)を持っています。親や祖父母にアトピー性皮膚炎があると、その子どもも発症しやすいと言われています。
アトピー性皮膚炎がある方は気管支喘息(ぜんそく)やアレルギー性鼻炎なども発症しやすく、このような状態はアレルギーマーチと呼ばれます。
アトピー性皮膚炎は乳児期に発症することが多く、成人になるにつれて改善する傾向がありますが、最近では大人になってから発症したり再発したりする人が増えてきています。
アトピー性皮膚炎は肌の乾燥によるバリア機能の低下も原因の一つですが、高温多湿もまた症状を悪化させます。かゆみがつらい病気です。
2.アトピー性皮膚炎の症状
アトピー性皮膚炎の症状としては、強いかゆみのある湿疹が左右対称に現れます。アトピー性皮膚炎の症状は年齢によって好発部位があります。
乳児では頭や顔、幼小児期では首や肘・膝の裏、思春期以降は上半身に出やすい傾向があります。
乳児では2ヶ月以上、それ以降では6ヶ月以上、かゆみのある湿疹が続くとアトピー性皮膚炎と診断されます。
アトピー性皮膚炎の症状は、カサカサ、ゴワゴワ、ジクジクといったさまざまな状態があり、「皮疹(ひしん)の重症度」が治療の際の重要な判断材料となります。皮疹の重症度は「軽微」「軽症」「中等症」「重症」の4段階があります。
アトピー性皮膚炎の症状は、よくなったり悪くなったりの状態を繰り返し、季節によっても症状の現れ方が違います。寒く乾燥した季節には、耳の端や耳のつけ根が切れたり、暑く湿気が多い季節には、湿疹が赤く腫れ上がったりすることがあります。
アトピー性皮膚炎は強いかゆみがあるため、かきすぎて傷ができ、化膿したりカサブタができたりします。その傷から、とびひやカポジ水痘様発疹症(すいとうようほっしんしょう)、水いぼなどの感染症を引き起こすことがあります。
また目の周辺に湿疹ができると、こすったりかいたりして、その結果、網膜剥離(もうまくはくり)や白内障など、目の合併症を引き起こすことがあります。
3.アトピー性皮膚炎の原因
アトピー性皮膚炎の原因は、アトピー素因、皮膚のバリア機能低下、環境、食物、ストレスなどが考えられ、それらが組み合わさって発症していると言われています。
(1)アトピー素因
アレルギーを起こしやすい体質のことです。親族に喘息(ぜんそく)やアレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎を発症したことのある人がいると、アトピー性皮膚炎を発症しやすいようです。
(2)皮膚のバリア機能低下
皮膚が乾燥しているとバリア機能が低下し、アレルゲンが皮膚に侵入しやすくなり、これを排除するために免疫の過剰反応、つまりアレルギーが起こります。
(3)環境
温度・湿度、ダニ・ホコリなどのハウスダスト、大気汚染・スキンケア化粧品・シャンプー・石けん・洗剤などによる化学的刺激、繰り返しかくことによる物理的刺激などがあります。
(4)食物
子どもは食物が原因となることが多いと言われています。
(5)ストレス
ストレスがホルモン分泌を促し、アレルギーを起こしやすくしているという研究結果があります。一方で、かゆいわけではないのにストレス発散のためにかいてひどい湿疹になっているという報告もあります。
4.アトピー性皮膚炎の治療
アトピー性皮膚炎の治療を開始するにはまず、検査により湿疹がアトピー性皮膚炎によるものかを確認します。
検査には血液検査、アレルゲンの検査、皮膚テストなどがあります。
アトピー性皮膚炎の治療は「薬物治療」「悪化要因の除去」「スキンケア」の3つを基本として行います。
(1)薬物治療
アトピー性皮膚炎の治療として行われる薬物治療には次のようなものを使用します。
- 外用薬:炎症とかゆみを抑えるステロイド薬、副腎皮質ホルモンを含まない免疫抑制剤
- 内服薬:かゆみを抑える抗ヒスタミン薬
アトピー性皮膚炎の治療として使われる中心的な薬はステロイド薬で、症状の程度や使用箇所によって、薬の種類が異なります。
ステロイド薬を長期間使うことに対する不安から、途中で使用をやめてしまう方もいますが、症状の悪化につながりますので、決められた期間使用しましょう。ステロイド薬は正しく使用すれば安全で炎症を早く抑える効果があります。
内服薬は、かゆみを抑える作用があるため、皮膚をかいて状態を悪化させることを防ぐ役割を果たします。
(2)悪化要因の除去
アトピー性皮膚炎を起こしている原因や、悪化させている要因となるものを取り除きます。
- こまめに部屋の掃除をしてハウスダストを減らす
- 衣類は化学繊維のものではなく綿素材を選ぶ
- 刺激物質に触れない
- 石けん・シャンプーなどは低刺激・無香料のものを使用する
- 趣味などでストレスを解消する
- なるべく汗をかかないようにする
(3)スキンケア
アトピー性皮膚炎の方は肌が乾燥して皮膚のバリア機能が低下しているので、保湿を心がけます。肌を清潔に保ち、保湿クリームなどで1日2回ほどケアします。薬物治療とともにスキンケアを行うことが、アトピー性皮膚炎の治療にはとても大切です。
(4)その他生活上の注意点
- 皮膚をかきむしらないように爪を短くする
- 規則正しい生活を心がける
- 十分な睡眠をとる
- 栄養バランスのとれた食事をとる
- 部屋の温度・湿度調整をする
- 目の合併症を起こしていないか定期的に検査する
アトピー性皮膚炎は、かゆみがつらい慢性の病気です。しかし、薬物治療で炎症やかゆみを抑えたり、保湿でバリア機能を向上させたりすることができます。アトピー性皮膚炎は原因を見つけ、適切な治療を行えば改善する病気です。どうぞあきらめないでください。