耳鳴りは、国民の1割以上が経験したことのある、身近で不快な症状です。耳鳴りの種類は、症状や原因など分類の仕方により、さまざまに分けられます。耳鳴りをともなう病気は、早期発見と早期治療が大切です。放置するのは好ましくありません。

耳鳴りの種類によって、受診する医療機関が異なります。まずは耳鼻咽喉科を受診し、原因が特定できないときは、脳神経外科、神経内科、診療内科等の受診が考えられます。

耳鳴りの種類の知識があれば、早めに対処することができます。耳鳴りの種類を事前に知ることは、耳鳴りを治すためにとても大切です。このページでは、耳鳴りを治したい方のために、耳鳴りの種類について詳しく説明しております。

1.耳鳴りはなぜ起こるのか

耳鳴りはなぜ起こるのでしょうか。耳鳴りといっても、原因は耳だけとは限りません。脳に異常が生じたときにも耳鳴りは起こります。

耳に届いた音は、内耳にある蝸牛(かぎゅう)で電気信号に変換され、聴覚路(音として認識されるまでの経路)を通って脳内の聴覚野まで伝えられます。

この際、視床(ししょう)という部位で、重要な音か不要な音かを判断されます。

たとえば、危険を知らせる報知器やサイレン、自分に話しかけられる声は「重要な音」、電化製品の運転音などは「不要な音」と判断されるのです。

聴覚路に何らかの障害が生じると、音を聞く機能の調整がうまくいかず、不要であるはずの音まで拾ってしまいます。これが耳鳴りの症状として現れるのです。

2.耳鳴りの種類

耳鳴りの種類は、症状の特徴や原因などにより、さまざまに分類されます。生理的なものから、重大な病気が関わっているもの、心因性のものなどがあります。

聞こえ方による分類

・生理現象

静かな所で「シーン」という音が聞こえることはよくありますが、自然な生理現象ですので、心配ありません。

・自覚的耳鳴り

耳鳴りの大半を占め、ご本人だけに聞こえる耳鳴りです。病気が原因であることが多いです。

・他覚的耳鳴り

体内に音源が存在し、検査により他者にも確認ができる耳鳴りです。耳の周辺の筋肉がけいれんすることにより「コツコツ」「プツプツ」といった音が一定のリズムで聞こえます。耳周辺の血液の流れが「ザーザー」と聞こえるものもあります。高血圧で起こりやすい耳鳴りです。

音の高低による分類

・高音性の耳鳴り

「キーン」といった金属音のような耳鳴りです。耳をふさぐと音が大きく聞こえます。老人性難聴、突発性難聴、騒音性難聴、自律神経失調症などでみられます。

・低音性の耳鳴り

耳閉塞感があり「ブーン」「ゴーッ」といった低い音が聞こえます。ストレスや気圧の急激な変化でみられますが、危険性は低い場合が多いです。

・「ジー」というセミのような音

突発性難聴が考えられ、聴力回復のためには早急な受診が必要です。

継続性による分類

・急性の耳鳴り

突然激しい耳鳴りが起こるもので、突発性難聴やメニエール病が考えられます。

・慢性の耳鳴り

強弱を繰り返し、症状が長く続きます。老人性難聴やメニエール病が考えられます。

聞こえる耳鳴りの数による分類

・単音声耳鳴り

耳鳴りの音が1つの場合をさします。

・雑音性耳鳴り

複数の異なる音が聞こえます。難聴の障害が広範囲に及んでいる場合や、原因が複雑な場合が考えられます。

3.耳に関係する耳鳴り

耳に関係する耳鳴りでは、耳で音を集める段階で障害が生じている場合があります。

  • 鼓膜破裂:外部からの強い衝撃で鼓膜が破れる
  • 耳硬化症:アブミ骨の動きが悪く鼓膜に音がうまく伝わらない。若い世代に起こることが多く、放置すると難聴へと移行することがある

 

耳鳴りの原因となりやすい耳の病気をご紹介します。

・外耳炎

耳に水が入ったり傷ができたりして起こる炎症

・滲出性中耳炎

アレルギーや風邪により、鼓膜からの分泌液がたまる。治療が遅れると悪性中耳炎に移行することがある

・耳管狭窄(きょうさく)症

鼻粘膜の炎症により、必要なときに耳管を開くことができず低音の耳鳴りが起こる

・メニエール病

内耳のリンパ液が増えすぎ、神経を圧迫して、激しいめまいとともに耳鳴りや難聴、耳閉塞感が起こる

・突発性難聴

片側の耳に難聴と耳鳴りが起こり、めまいもともなう。

・外リンパ瘻(ろう)

くしゃみや鼻を強くかむことにより、内耳窓という部分に穴があき、リンパ液が漏れてしまう病気。耳鳴りとともに、耳閉塞感、難聴、めまいなどが起こる

耳に関係する耳鳴りは、難聴と関わりが深いと言われます。聴力の低下があると、脳が音を聞き取るために聴神経の感度を高めようとします。その結果、受け取る必要のない電気信号まで拾うことになります。その不要な音が耳鳴りの症状となるのです。

難聴は、加齢によるもの、大音量で音楽を聴く、騒音の多い生活環境で過ごすなどで起こりやすく、耳鳴りの症状が出ます。特に注意が必要なのは突発性難聴です。発症後48時間が予後を左右すると言われています。

また、日常の小さな不注意から耳鳴りを生じることがあります。耳垢がたまって耳の穴がふさがっている、泳いだあとに耳に入った水が出ないなどが、耳鳴りを招くこともあります。これらは、耳掃除をする、綿棒で水分を除去するなどで耳鳴りを防ぐことができます。

4.脳に関係する耳鳴り

脳に関係する耳鳴りは、脳疾患の症状の一つとして現れます。

耳から入った音は脳内で処理されるのですが、脳に異常があると、「キーン」という高い金属音のような耳鳴りがします。

同時に、めまいや嘔吐をともなうこともあります。

「ドクドク」という脈打つような音の拍動性耳鳴りも、脳の異常から起こる耳鳴りなので、注意が必要です。

脳の異常が原因で起こる耳鳴りは、命に関わる可能性がありますので、早急な対応が必要です。脳梗塞、脳出血、脳腫瘍など、重篤な疾患の前触れとして耳鳴りが起こることがあります。

耳鳴りと同時に、言葉が出ない、吐き気がするなどの症状が合わせてみられるときは、即座に救急車を呼んでください。

5.耳や脳以外に関係する耳鳴り

耳や脳以外に関係する耳鳴りもあります。耳鳴りを引き起こす原因は、耳や脳だけにあるとは限りません。

ストレスやうつ状態、自律神経失調症など精神的な疾患から、耳鳴りが起こることもあります。

耳鳴り自体がつらい症状であり、ストレスとなるので、回復には少し時間がかかります。不安を取り除き、リラックスできる環境が必要です。

甲状腺や糖尿病、高血圧、顎関節の歪み、女性ホルモンの減少による更年期障害も関連性があります。高血圧の場合、他覚的耳鳴りが生じやすく、検査で音を確認することができます。

免疫力が低下すると、感染症にかかりやすくなり、帯状疱疹や風疹でも耳鳴りの症状がみられることがあります。

耳鳴りの症状を悪化させるものに、睡眠不足、疲労、飲酒、喫煙などがあります。耳鳴りの症状があるときは、このような生活習慣も少し見直してみましょう。

耳鳴りは身近な症状です。自然に解消する耳鳴りもあれば、重篤な病気が関わっている場合もあります。心配のない耳鳴りなのか、緊急を要する耳鳴りなのかを判断するために、事前に耳鳴りの種類について知っておくことはとても大切です。

そして、放置することなく、医療機関で耳鳴りの検査を受けてください。

耳鳴りは、タイプに応じた適切な治療を行えば改善する病気です。どうぞあきらめないでください。