異臭症とは、本来のにおいとは異なるにおいを感じたり、においのしないはずのものににおいを感じたりする症状です。良いにおいであるはずのものに対して、焦げ臭いにおいや生ごみのようなにおいがするなど、不快な症状があります。嗅覚(きゅうかく)障害の一つです。
異臭という言葉は誰もが知っていますが、異臭症という症状があることはあまり知られていないのではないでしょうか。においの感じ方がおかしいと自覚していても、異臭症だと気づいていない方もいらっしゃると思われます。
好きだった香りが嫌なにおいに変わっているなど、以前とは違う感じ方をしていたら、異臭症かもしれません。かぜをひいたときは、鼻づまりなどでにおいがわかりにくいことがありますが、かぜが治った後ににおいの変化があったら、異臭症の可能性があります。
異臭症は不快な症状があるだけでなく、鋭い嗅覚を求められる職業の方であれば、仕事に支障をきたし、離職の可能性も出てきます。
また、異臭症そのものが命にかかわるわけではないのですが、本来と違うにおいに感じてしまうので、ガス漏れなどの危険を察知できない可能性もあります。
そのため、においの感じ方がおかしいことを我慢し続けるのではなく、検査を受けてできるだけ早く治療を開始しましょう。長く放置すると、回復する確率が低くなります。
異臭症を発症する原因となる病気があった場合は、その病気を治療しなければなりません。原因となる病気が治れば異臭症も治る可能性があります。
異臭症を治すためには、異臭症の症状・原因・治療について知ることが大切です。このページでは、異臭症を治したい方のために、異臭症の症状・原因・治療について詳しく説明しております。
1.異臭症とは
異臭症とは、嗅覚障害の一つで、その名の通り、本来のものとは異なるにおいがする症状です。
嗅覚障害は量的障害と質的障害に大きく分類することができます。
量的障害には、全くにおいを感じない、一部のにおいを感じない、決まったにおいだけ感じないといったケース、あるいは全般的ににおいを感じる力が弱まっているケースがあります。
質的障害は違うにおいに感じてしまうケースで、異臭症はこれに該当します。本来よりにおいを強く感じてしまう嗅覚過敏症は量的障害のイメージがありますが、不快感が強いため、これも質的障害に含まれます。
質的障害である異臭症はさらに、刺激性異臭症と自発性異臭症に分けられます。
- 刺激性異臭症:本来のにおいと異なるにおいに感じる、あるいはどれも同じにおいに感じてしまうこと
- 自発性異臭症:においのする物質がないのに、においを感じてしまうこと
異臭症では、焦げ臭いにおいや生ごみのようなにおいなど、不快なにおいを感じる方が多いようです。良い香りのするはずの花やおいしそうな料理から嫌なにおいがしたり、周囲の人と香りを共有できないのはとても残念でしょう。
本来のものと違うにおいを感じるので、料理人など嗅覚が重要視される職業の方は支障がありますし、日常生活でもガス漏れや火事に気付きにくいといった問題が発生します。
異臭症があると、量的障害である嗅覚の低下を伴っていることも多く、さらににおいがわかりにくいと味もわかりにくくなり、味覚にも障害を生じることになります。
異臭症の症状は、くしゃみをしたり、鼻をかんだりしたことがきっかけで発作的に起こることもあります。異臭症は必ずしも両側の鼻に起こるわけではなく、片側の鼻のみに起こることもあります。
また、異臭症であることは見た目ではわからないため、周囲から理解されにくく、無理解により本人がうつ状態になることがあります。
異臭症がなぜ起こるのか、まだ厳密にはわかっていませんが、かぜや頭部外傷の後に発症する方が多いため、嗅覚の回復過程で嗅細胞が誤って配置されるのではないかと考えられています。
そのほかに加齢、職業、アレルギー、神経変性疾患(パーキンソン病、アルツハイマー病など)、薬剤の使用、腫瘍、脳外科手術、精神疾患、心理的要因も異臭症の原因と考えられます。
2.異臭症の治療
異臭症の治療を行う際、既往歴や発症時期などを尋ねる問診、血液検査、鼻咽腔(びいんくう)ファイバースコープ検査、基準嗅覚検査、静脈性嗅覚検査などで、原因を探っていきます。さらにCT検査やMRI検査などの画像検査も行うことがあります。
異臭症そのものの治療はまだ確立していませんが、異臭症の方は嗅覚低下を伴うことが多いため、異臭症の治療として嗅覚低下の治療を行います。嗅覚低下の治療法は、症状の程度や原因によって異なりますが、主に薬物治療です。
また生理食塩水を点鼻する方法があります。一時的に症状を抑える方法ですが、生理食塩水を点鼻することで、嗅細胞のある部分をふさいで、におい自体が届かないようにします。
亜鉛不足がある場合は、亜鉛製剤を内服することで症状の改善が見られることがあります。
異臭症の原因疾患がはっきりとしている場合は、その疾患の治療を行います。手術を行う場合もあります。原因となっている病気が治ると、異臭症の症状がなくなる可能性があります。
心理的な要因が考えられる場合や、異臭症による悩みで精神症状が見られる場合は、カウンセリングも行います。
嗅覚障害は発症してから放置した時間が長いほど、治るのに時間がかかります。そのため、においの感じ方に異常を感じたら、いつまでも我慢するのではなく、できるだけ早く治療を受けましょう。
3.異臭症を治すために日常生活でできること
異臭症を治すために日常生活でできることがあります。異臭症の治療を行いながら、同時に日常生活の見直しもしてみましょう。
(1)睡眠
睡眠を十分にとることで異臭症の症状が軽減した方もいます。睡眠不足が嗅覚に悪影響を与えるのではないかと考えられています。
(2)食生活の改善
食事が偏ると栄養素が不足するので、できるだけバランスの良い食事を心がけることが大切です。亜鉛が不足している場合、亜鉛製剤の内服が有効であるため、食事からも亜鉛を摂取しましょう。
(3)積極的ににおいをかぐ
意識的にさまざまなにおいをかぐことで、嗅神経に刺激を与え活性化します。
(4)悩みを共有する
異臭症は他人にわかりにくい症状で、一人で悩むとうつ状態になるケースもあります。親しい人に打ち明けたり、同じ悩みを持つ方と情報を共有したりすることで不安感が軽減します。不安を解消して精神面への悪影響を防ぎましょう。
異臭症は命にかかわるような状態ではありませんが、不快な症状ですし、他人に理解してもらうのが難しく、一人で悩まれる方も多いでしょう。職業によっては、嗅覚の異常が大きな障害となるかもしれません。
異臭症は、メカニズムや治療法がまだ確立されていません。しかし、嗅覚に関する研究が急速に進んでおり、異臭症に対するより有効な治療法の開発が期待されます。
生活習慣の見直しをすることで症状の改善につながることがあります。治療を受けながら、日常生活の中でご自身ができることを少しずつ取り入れてみてはいかがでしょうか。どうぞあきらめないでください。