腰椎ヘルニア(腰部椎間板ヘルニア)とは、腰椎(ようつい)の椎間板(ついかんばん)があるべき場所からはみ出し、周辺の神経を圧迫するために、腰やおしり、脚に痛みやしびれの症状が現れる病気です。
腰椎ヘルニアは、悪い姿勢・動作や加齢が主な原因とされており、30~40代の方に多く見られるということです。ぎっくり腰の原因になるとも言われています。
加齢により椎間板は徐々に劣化していくのですが、姿勢の悪い方や同じ姿勢を長く続けている方は劣化速度が速くなります。そうすると腰椎ヘルニアを発症する可能性が高くなります。
事務や運転のお仕事をされていると、長時間座りっぱなしで作業を続けざるを得ません。また、スマホなどに夢中になって長時間同じ姿勢をとっている方も多いと思われます。
腰椎ヘルニアは自然治癒することも多いのですが、悪化すると歩行困難や排尿排便障害へとつながるケースもあります。放置せず早く治療を開始すれば、腰椎ヘルニアは改善することができます。
腰椎ヘルニアを治すためには、腰椎ヘルニアの症状・原因・治療について知ることが大切です。このページでは、腰椎ヘルニアを治したい方のために、腰椎ヘルニアの症状・原因・治療について詳しく説明しております。
【目次】
1.腰椎ヘルニア(腰部椎間板ヘルニア)とは
腰椎ヘルニア(腰部椎間板ヘルニア)とは、腰椎の椎間板が本来あるべき場所からはみ出して、周辺の神経を圧迫するために、腰や脚に痛みやしびれを引き起こす病気のことです。
背骨のことを脊椎(せきつい)と言い、その部位によって頚椎(けいつい)・胸椎(きょうつい)・腰椎と言います。
背骨を形成している一つ一つの骨を椎骨(ついこつ)と言いますが、椎骨と椎骨の間にあるのが椎間板で、クッションの役目を果たしています。
椎間板ヘルニアは椎間板がはみ出すことで痛みやしびれの症状を引き起こし、頚椎・胸椎・腰椎のどの場所の椎間板がはみ出したかによって、症状の現れる場所が違います。このうち腰椎に起こったものを腰椎ヘルニア(腰部椎間板ヘルニア)と言います。
腰椎に起こる異常の中で、椎間板ヘルニアは最も多く見られる疾患で、ぎっくり腰の要因の一つと言われています。30~40代の方に多く見られるということです。
腰椎ヘルニアは、加齢による椎間板の劣化や悪い姿勢による椎間板ヘの負担が原因とされ、自然治癒することが多いのですが、悪化すると日常生活に支障をきたすこともあります。
2.腰椎ヘルニア(腰部椎間板ヘルニア)の症状
腰椎ヘルニアの症状は、腰痛と坐骨神経痛です。坐骨神経痛とは、お尻の痛み、太ももの後ろ側・すねの外側・つま先のしびれなどのことで、坐骨神経に沿って痛むのでこの名前があります。
腰椎ヘルニアの症状は、活動時に悪化し安静時に軽くなる傾向があります。また、くしゃみや咳が出たときや、長時間座ったり運転したりしたときに強い痛みを感じることがあります。これは神経に大きな圧力がかかるためです。
腰椎ヘルニアの症状の出る場所や強さは、どの椎間板がはみ出しているか、神経をどのくらい圧迫しているかによります。
腰椎ヘルニアは自然治癒することが多いので、そのうち治るだろうと放置される方もいます。しかし、腰の痛みをかばうために姿勢が悪くなり背骨が曲がってくると、さらに悪影響を受けることになります。
腰椎ヘルニアの症状が悪化すると、脚やつま先のしびれ・麻痺などが起こり、歩行障害・排尿排便障害といった深刻な状態となるケースもあります。症状が軽いうちに治療をして、早く治しましょう。
3.腰椎ヘルニア(腰部椎間板ヘルニア)の原因
腰椎ヘルニアの原因は、主に悪い姿勢・動作、加齢などがあります。
(1)悪い姿勢・動作
腰椎ヘルニアの最も大きな原因として、悪い姿勢・動作が挙げられます。長時間、同じ姿勢や同じ動作を続けることで、特定の椎間板に大きな負担をかけることになるのです。
事務や運転など長時間の座り仕事、うつぶせ寝、ハイヒールなどが原因となります。前かがみの姿勢は体重の2倍以上の圧力を椎間板にかけてしまうと言われています。
また、腰椎ヘルニアの治療を行わずに痛みを我慢していると、その痛みをかばうために姿勢が悪くなり、またそれが原因で痛みが悪化するという悪循環となります。
(2)加齢
加齢により椎間板は劣化し、平たくなって弾力がなくなっていきます。そのため、無理な姿勢や動作の影響を受けやすくなります。
(3)その他
- 遺伝要因:骨の形、体質
- 栄養:偏食や極端なダイエットなどによるカルシウム不足
- ストレス
- 喫煙
4.腰椎ヘルニア(腰部椎間板ヘルニア)の治療
腰椎ヘルニアの治療を始めるには、問診と検査を行い、症状の部位と程度を確認します。検査には次のようなものがあります。
- SLRテスト(下肢伸展挙上テスト):腰椎下部の検査
- FNSテスト(大腿神経伸長テスト):腰椎上部の検査
- 筋力検査
- 感覚検査
- 画像検査:レントゲン、CT、MRI
腰椎ヘルニアは、安静にして痛み止めを使用することで多くの場合、改善します。改善されない場合は、ブロック注射、さらには手術を行います。手術を行わない治療法を保存療法と言います。
(1)保存療法
①安静療法
症状を悪化させないように、腰椎コルセットをつけて安静にします。
②温熱療法
ホットパックや赤外線照射によって筋肉の凝りをほぐし、血液の循環を良くします。
③腰部マッサージ
血行を良くしたり、筋肉を刺激したりします。
④薬物療法
鎮痛消炎剤や筋弛緩剤、ビタミン剤などで炎症を抑えます。
⑤牽引療法
⑥ブロック療法
(2)手術
保存療法で改善が見られない場合は手術を行います。
①切開手術
「直視下」「顕微鏡下」「内視鏡下」でヘルニアの部分を切除します。
②レーザー治療
原因となっている椎間板に針を刺して、レーザーを照射し、椎間板を収縮させることで神経の圧迫を軽減します。切開手術に比べて負担の小さい治療法です。
(3)日常生活の見直し
腰椎ヘルニアは、悪い姿勢が原因となって椎間板に負担をかけていることが多いので、日頃の過ごし方を少し見直すことは、予防や症状の改善に役立ちます。
- 意識して正しい姿勢を保つ
- 座って作業をするときは、ときどき体を動かす
- ものを持ち上げるときは、腰を落として体に寄せてから持ち上げる
- できれば、かかとの低い靴をはく
- ストレッチなどで体を柔らかくする
- ウォーキングなど軽い運動をして血行を良くし、筋力をつける
- 体重が増えすぎないようにする
腰椎ヘルニアは自然治癒することが多いのですが、放置して悪化すると、歩行や排尿・排便が困難になることがあります。できるだけ早く治療を開始することで、つらい症状に長期間悩まなくて済みます。
腰椎ヘルニアの治療法や日常でできる工夫がいろいろあります。腰椎ヘルニアは、適切な治療をすれば改善する病気です。どうぞあきらめないでください。