頸部脊柱管狭窄症(けいぶせきゅうかんきょうさくしょう)は、脊髄(せきずい)の通っている管である脊柱管の中でも、主に頸部(けいぶ:首)で狭窄症が起こり、脊髄や神経の圧迫や変形により痛みなどの症状が出る疾患です。
頸部は、頭を支え脳につながる重要な部分です。頸部脊柱管狭窄症は、日常的な習慣や仕事柄、また何らかの衝撃や外傷を首に負ったり、生まれつきの体型によっても発症しやすくなります。
症状は急に進行するわけではなく、すぐに気づかない場合もあります。とくに肩こりや首こり、頭痛といった初期の症状は軽く考えてしまいがちで、頸部脊柱管狭窄症の病名に結びつかないものです。
頸部脊柱管狭窄症を治すためには、頸部脊柱管狭窄症の症状・原因・治療について知ることが大切です。このページでは、頸部脊柱管狭窄症を治したい方のために、頸部脊柱管狭窄症の症状・原因・治療について詳しく説明しております。
【目次】
1.頸部脊柱管狭窄症とは
頸部脊柱管狭窄症とは、頸部の脊柱管が何らかの影響を受け、圧迫されたり変形することで痛みやしびれが出る疾患です。脊柱管狭窄症には、患部によって「腰部脊柱管狭窄症」と「頸部脊柱管狭窄症」があります。
症状を訴えられる年齢層は中高年の方が中心ですが、30歳代や若い方にも起こり得るものです。体当たりするレスリングやボクシング、柔道といった格闘技をされている方や事故などにより衝撃を受ければ、発症のリスクは高まります。
首には頸動脈という主要な血管が走っており、頭部と胴体とをつなぐ役目があります。常に安定させ、外傷や外部からの強い圧力がかからないよう守る必要のあるデリケートな部位であるといえます。
2.頸部脊柱管狭窄症の症状
頸部脊柱管狭窄症の症状は、首まわりや肩、腕から手にかけての上半身にあらわれます。うなじから首筋にかけての強い張りやこり、痛みなどは初期の症状です。
「寝違えたかな?」と思ったり、疲れが溜まっていると考え、放置することも多いでしょう。
腕の外側から手の中指や薬指、小指にかけて、しびれたり痛みが走ることもあります。握力が次第に低下し、何かものを握った時に力が入らず落としてしまうなどの状況が増えると要注意です。
首をまわしたり横を向いたり、上を見上げる、後ろに反らすなど動かしてみると、痛みはかえってひどくなる場合があります。症状は最初に、右側か左側のどちらか一方に出るのが一般的です。
片側の肩や腕に出現した症状は、やがて両側に及びます。重症化していくと、ごはんを食べる時に箸が持ちにくい、指先が思うように動かず服のボタンがうまくとめられない、小さなモノがつかめないといった状況が出てきます。
しびれや痛みの症状は上半身ぜんたいに拡がり、さらに歩くと足がもつれる「歩行困難」や「排尿・排便時の障害」など下半身にまで出ることもあります。徐々に進行していき慢性化しやすいので、初期の症状が現われた時点で対処するのが得策といえます。
3.頸部脊柱管狭窄症の原因
頸部脊柱管狭窄症の原因として直接的には、脊柱管が狭くなり脊髄や神経、血管などを圧迫していることです。脊柱管に狭窄症が起こるきっかけには、さまざまなことが考えられます。下記にまとめてみました。
(1)先天的な頸椎の形状
生まれつき脊柱管が狭かったり、椎間板の変形がある、あるいは骨や靭帯が突出している場合、頸部脊柱管狭窄症を発症しやすくなります。体質や骨の形には、遺伝的な要因があるといえます。
(2)加齢による影響
骨や靭帯などの繊維組織は、年齢が進むにつれ脆弱(ぜいじゃく)になります。老化はからだ全体で起きますので、たとえば腰が曲がり前かがみの姿勢になることで、首への負担も増えてきます。
(3)格闘技や激しいスポーツなどの影響
柔道やレスリング、ボクシングなどの格闘技や、ラグビーやサッカー競技でのヘディングなどでも、首にかかる外圧の負担はあります。
(4)交通事故などの後遺症
追突事故などによるアクシデントでむち打ちや外傷を受けると、頸椎が強く圧迫され骨や靭帯への悪影響が出てきます。
時間がしばらく経過してから症状が出現するケースもあります。
(5)姿勢の悪さ
とくに衝撃を受けなくても、日常的な習慣で姿勢が悪い場合も原因となります。最近ではスマートフォンやパソコンの使いすぎ、また仕事で長時間の下を向いた作業などは首への負担が大きくなります。
4.頸部脊柱管狭窄症の治療
頸部脊柱管狭窄症の治療には、症状の程度により複数の方法があります。頸部は頭部と胴体のつなぎめです。
重要な血管や神経の通っている部位で、ダメージを受けるのは生命の存続を左右することにもなりかねません。
重症化した頸部脊柱管狭窄症では、外科手術という手段もあります。しかし、なるべく別の方法を選択できるよう、症状の軽いうちに対処していくのが賢明です。手術ではない有効な「保存療法」について、下記にまとめました。
(1)薬物療法
狭窄となっている箇所では血流の滞りが認められ、痛みも生じやすくなります。痛みがひどく日常生活に支障をきたす場合は、鎮痛剤を用います。対処療法ですが、当面の痛みを抑えることはできます。
(2)温熱療法
頸部脊柱管狭窄症では、痛みがある箇所を中心に温めるのが効果的です。温湿布や温めたタオルを用いたり、熱を発するホットパックを塗布するなど、温度が熱くなりすぎないよう気をつけながら血流を促します。
温熱療法は、血流の改善が見込まれること以外にも、硬直した筋肉をほぐす、気持ちがリラックスし副交感神経が優位になるといった効果も期待できます。日常的には、首まわりを冷やさないようストールやマフラーなどを用いるのも良いでしょう。
(3)運動療法
筋肉の硬化や血流の悪化に対しては、運動をして改善するのが基本です。ただし間違った方法や過度に行うことは、却って傷めてしまう可能性もあります。専門家がすすめる有効なストレッチや首の体操などを、ご自身にとってムリのないレベルで行いましょう。
(4)装具療法
背後に反った姿勢になると痛みが走る場合などは、頸部コルセットのような医療装具をつけます。首全体を支え安定させることができ、痛みを感じないようにします。
(5)生活習慣の見直し
姿勢の悪いまま長時間を過ごすのは、頸部脊柱管狭窄症を誘発することにつながります。日頃の姿勢の悪さを改善し、意識して首への負担を減らすことが肝心です。仕事で首を酷使される方も、休憩時間に首をまわす体操をするなど工夫をしてみましょう。
頸部脊柱管狭窄症は放置するのでなく、早めの対処で治療の選択肢は拡がります。頸部の緊張状態を長く続けることは避けて、肩こりや首こりの症状は悪化する前に緩和させるのが得策です。
頸部脊柱管狭窄症は原因を見つけ、しっかりと治療をすれば良くなる病気です。どうぞあきらめないでください。