緑内障は、発症していることを自覚しにくい眼の疾患です。症状は少しずつ進行していきます。眼には「トータルでものを見ようとする」というはたらきがあり、左眼か右眼のどちらか機能が弱くても、他方が補おうとするのです。
緑内障の症状は、たいてい左右の片側から出現します。進行がゆるやかであることに加え、見え方をカバーしてしまうことが、異変に気づきにくくなる要因ともなります。そこで緑内障では、見え方のチェックを定期的に行うことが重要になってくるのです。
緑内障の症状のチェック方法を知ることは、緑内障に早期対処し治すためにとても大切です。このページでは、緑内障を治したい方のために、緑内障の症状のチェック方法について詳しく説明しております。
【目次】
1.緑内障の症状
緑内障の症状としては、まず視野の欠損や見え方の異常があげられます。
緑内障の初期では、顕著(けんちょ)な症状は出にくいものです。ものの見え方は天気や体調によっても変わるため、「何となく見えにくい」と思っても放置されることが多いのです。
また眼を酷使する生活が主流となっている現代では、眼精疲労を常にかかえている状況が少なくありません。見えにくさは疲れ目の延長としてとらえられがちで、緑内障を発症しているかもしれないという危機感にはつながらないのです。
いつも見ている風景に違和感があったり、視野に見えない部分があらわれ、その範囲が拡がったりした場合は、緑内障の症状かもしれません。車の運転がしにくくなった、以前は見えていた看板の文字がぼやけるなど日常生活で異変に気づいたら、医療機関を受診するのが得策です。
また激しい眼の痛みが起きたり、頭痛や嘔吐をともなっている急激な症状は、急性緑内障の可能性が高いといえます。慢性緑内障と違って明らかな症状が出ますので、この場合は緊急対応をしてくれる医療機関へ速やかに連絡をしましょう。
2.緑内障のチェック方法
緑内障のチェック方法には、ご自身だけでできることもあります。
眼科医院で検査をするのが確実なのですが、その前にセルフチェックをされるのも良いでしょう。
下記の通り、さまざまな側面から緑内障の危険因子をあげてみました。
とくに40歳代以上の年齢層ですと発症するリスクが高まります。該当される方は、ぜひチェックしてみてください。
(1)見え方のチェック
- 左右で見え方が違う(どちらかだけが明らかに見え方が悪い)
- 視野の一部がぼやけていたり、暗かったりする
- 街灯や電球を見た時、光のまわりに暈(かさ)がかかっている
- 以前よりも視力が低下してきた
(2)眼の状態
- いつも充血している
- 眼を使っていなくても、常に疲れを感じている
- かすみ目になりやすい
- まぶたの上から眼球に触れてみて、以前よりも硬くなったと感じる
(3)ご自身の経歴や環境
- ご家族や近い血縁関係に、緑内障でお困りの方が複数いらっしゃる
- 定期健診などで「高眼圧」と指摘を受けたことがある
- 近視、または遠視である
- 眼球のケガや外科手術といった眼の既往歴がある
(4)日常的な習慣
- 本を読んだり、パソコンやスマートフォンを使う時間が長い
- 仕事で、下を向いて作業をする機会が多い
- 睡眠時間が不足している、眼を休ませる時間が少ない
- 寝るときの姿勢はうつぶせである
- ストレスがたまりやすい
- 運動不足であったり、偏った食事内容になっている
思い当たる項目が多い場合は、医療機関で正式な緑内障の検査を実施するのが賢明です。迷わずに眼科医院を受診してください。異常がないと診断されても、定期的に調べていくことが大切です。
3.緑内障に関する検査
緑内障に関する検査には、簡易的なものから精密なものまで種類があります。集められた複数の検査結果は、多角的に診断するための材料となります。
症状として実感しにくい緑内障では、数値や画像に基づく専門家の所見が要です。下記にまとめてみました。
(1)簡易的な検査(ご自身でできるもの)
自宅でご家族に協力してもらい、二人一組で片眼ずつ行う「対面式視野チェック」や、画用紙の中央に印をつけて右眼と左眼で見え位置や形の違い、ちらつきなどを確認する検査などがあります。
ただし、簡易的な検査は自己判断でしかないので、これだけで終わらせるのは不十分です。これを踏まえ、「医療機関で本格的な検査を受けるための入り口」と考えるのが良いでしょう。受診するためのきっかけとしてください。
(2)視野の検査
専用の検査器具や画面を見て、実際に見えた範囲や位置、欠けた部分がないかなどを測定します。右眼と左眼、それぞれで見え方の程度を数値化するため、客観的に判断することができます。
(3)眼圧の測定検査
眼圧測定器具を用いて、外側から眼球に直接押し当てて測る方法と、眼球の表面に圧縮空気を吹きかけ測定する方法があります。眼圧は、一日にうちで測定する時間帯により変化があり、また個人によっても差があります。
(4)眼底検査
眼球に光を当てることで、視神経に異常がないかを調べます。視神経乳頭部の大きさやくぼみ、変形がないかを観察することで、視神経に障害が出ていないかを確認します。近年は三次元画像解析装置が開発されたことで、的確な診断が可能となりました。
(5)隅角検査
眼球内の房水が排水される部位を隅角(ぐうかく)といいます。隅角が排水しにくい構造や広さ、形がいびつであると眼圧を上昇させる原因となります。
4.緑内障の予防を考える
緑内障の予防を考えることは意義があります。とくに症状がなくても、眼にとって良い習慣を日頃から実践していくことは、緑内障を遠ざけることにつながります。
対策として有効なことを下記にまとめてみました。
(1)生活習慣を是正する
緑内障に限らず、生活習慣病など健康管理においての共通事項といえます。早寝早起き、過不足のない睡眠、運動不足の解消、ストレスとうまくつき合う(上手に気持ちの折り合いをつける)、喫煙はしない、といったことがポイントです。
(2)眼を労わる
普通の生活をしていても、気づかないうちに眼には大きな負担をかけているものです。一日のうち、液晶画面を観る時間を制限する、遠くを見る、ホットマスクなどで眼を温める、マッサージをして血行を促すなど、意識的に眼を労わる習慣をつけましょう。
(3)食事を見直す
現代人は、ビタミンやたんぱく質を多く含む食品が不足しています。一日に必要な栄養素を摂取するとなると、たくさんの野菜や肉、魚類を食べなければなりません。錠剤のサプリメントや粉末に加工された青汁といった健康食品を利用する方法もあります。
(4)チェックや検査を習慣化する
定期的な検査を受けることを習慣にするのも、緑内障を予防することのひとつとなります。緑内障の検査は種類が多く時間もかかり、けして楽なわけではありません。しかし面倒だと思わずに、続けて実施することが眼の健康管理となるのです。
緑内障の検査結果は保管しておくのが賢明です。月日の経過で、眼に関する数値の変化や傾向などを把握することができるからです。どうぞあきらめず、早めの対策と治療に専念されてください。