緑内障は視野が欠けたり見え方に異常が出る眼の疾患で、40歳を過ぎると発症する割合が高くなります。治療は長期間に及ぶことが言われており、緑内障でお悩みの方は多くいらっしゃいます。ゆっくり進行し、発症していることに気づきにくいという難点があります

緑内障に有効な点眼薬の開発や発症のメカニズムなど、医学的な研究は積極的に推し進められています。緑内障の遺伝性についても、緑内障を発症しているご親族がいらっしゃる方には気になる問題で、緑内障の重要な研究課題となっています。

緑内障の遺伝について知ることは、緑内障の治療を効果的にすすめるため、また緑内障を治すためにとても大切です。このページでは、緑内障を治したい方のために、緑内障の遺伝について詳しく説明しております。

 

1.緑内障の遺伝性

緑内障の遺伝性については、以前から「その可能性があるのではないか」という意見が支持されてきました。

しかし現段階で、完全に解明されているわけではありません。ただ、緑内障の発症にかかわる複数の遺伝子が存在すると考えられているようです。

緑内障の発症に関与する遺伝子を受け継いでいたとしても、実際に発症するとは限らないことも事実です。緑内障の発症に至るにはさまざまな要因が考えられ、遺伝的問題はそのなかのひとつであり、単独での決定的な要因であるとは言い切れません。

緑内障に関する医療的なデータから言われることは、一般的に緑内障を発症されている血縁者がおひとりいらっしゃったとして、偶然である可能性もあります。しかし二人、さらにそれ以上いらっしゃる場合は、そうでない方より格段にリスクが高くなるということです。

緑内障を発症するリスクが他の方よりもあると認識し、大切なのは定期的な眼科検診をきちんと受けることです。緑内障を発症していれば、できるだけ早期に治療を開始することで進行を遅らせることができます。

2.緑内障を発症する要因

緑内障を発症する要因は単一ではなく、さまざまなことが考えられると先にも述べました。

遺伝性だけでなく、他にどのようなことが発症に関係しているのか、その要因を下記にまとめてみました。

1)眼球内の構造に問題がある

眼球内で房水が流れにくいと眼圧が上昇し、緑内障の発症につながります。胎児の時に何らかの原因で未発達となり、生まれつき隅角が狭い、角膜や眼球そのものが小さく「先天性緑内障」となるケースもあります

2)眼圧が上昇しやすい

体質として眼圧が上昇しやすい、あるいはもともと眼圧が高いという方ですと、そのことが視神経乳頭を圧迫し障害を与えてしまうことになります。個人差があり、たとえ眼圧が高くても緑内障の発症にはつながらない場合もあります。

3)眼球内の血液循環が悪い

血流が悪く血液が不足すると、視神経に充分な栄養が運ばれないため、緑内障を発症する原因となります。血流の循環不良には、大脳に障害があるなど脳内にかかえている疾患が影響しているケースもあります。

4)眼を酷使する生活

緑内障の発症にかかわる要因として、眼に良くない生活習慣であることも、そのひとつであります。パソコンやスマートフォン、テレビ画面などを長時間に渡り眺める生活をされている方は、現代では増加していると思われます。

まぶしい光を凝視続ける行為や、睡眠が不足していたり、下を向いた姿勢で長時間過ごすことは、眼にとっては好ましくない習慣です。負担となり、日常的に眼精疲労が起きている可能性があります。

5)別の疾患が影響している

緑内障を発症するケースの中に、血糖値が低い、持病で糖尿病を患っているといった別の疾患が引き金となっていることがあります。近視や遠視の方、網膜剥離といった眼に関する既往歴がある方、ストレスをためやすい性質なども、少なからず影響があるといえます。

3.緑内障の遺伝性と生活習慣

緑内障の遺伝性と生活習慣については、正しく認識する必要があります。

親族のなかに緑内障を発症された方がいて、ご自分も発症した場合、安直に「遺伝が原因している」と結論づけてしまいがちです。実際には、そう単純なことではなく、遺伝性が決定的な要因であると断言できるわけではないのです

血縁者で発症しやすくなる背景には、生活習慣や育ってきた環境がおおいに関係しています。生活を共にしていると食べ物の嗜好や行動パターンなどが類似してきます。そういった後天的な要素の方が、遺伝子そのものよりも影響しているのです。

身近な親族が緑内障を発症しているのであれば、確かにリスクは高まると言われています。緑内障を予防する対策を考え、眼にやさしいライフスタイルを実践していくのが得策です。緑内障では、早期の診断と早期の治療開始が有効となるのです。

4.緑内障への対策法

緑内障への対策法として、日常から実践できることを考えてみましょう。

1)視力や見え方をチェックする習慣をつける

緑内障は、どちらか片側の眼に異常が出ても、他方がカバーするため気づきにくいという傾向があります。

左右片方ずつ、見え方に変化がないか定期的にチェックする習慣をつけ、眼科での定期検査も怠らないようにしましょう

2)ストレスをためない

精神的な負担は、自覚しないうちに身体のあちらこちらへ悪影響を与えています。眼に対しても、同様のことがいえます。ご自分なりのストレス解消法をみつけて、ためこまないように心がけましょう

3)食事の内容に気を配る

眼のために良い栄養素として、アントシアニン、ビタミン類やたんぱく質などがあげられます。食品としてはブルーベリーやカシスといったベリー系の果実が代表的です。うなぎや豚肉、かぼちゃやほうれん草、にんじんなどの緑黄色野菜も積極的に摂りたい食品です。

逆になるべく避けたいのは、脂質あるいは糖質の食品です。酸化させる食品、フライドポテトなどのファストフード、スナック菓子、また甘すぎる缶コーヒー、ドーナツやケーキなどは糖分を摂り過ぎることになります。できるだけ控えるようにしましょう。

4)眼を休ませる

最近は、スマートホンやタブレット端末などの普及にともない、眼を酷使する生活が主流となっています。それらを利用する時間を制限するなど工夫して、眼を使い過ぎないよう注意しましょう。ホットアイマスクなどで眼のケアをするのも有効です。

5)適度に運動する

同じ姿勢を持続したり、動かないと血流が悪くなります。また眼や頭は心臓より上に位置し、血行が悪くなりがちです。適度な運動をして、肩や首まわり、頭部や眼の周辺をマッサージするなどし血流を促しましょう。

緑内障を発症する要因として、遺伝性は複数あるなかのひとつにすぎません。親族に緑内障を患ってる方がいるからと、気にしすぎるのも精神的に良くないといえます。医療機関で定期的な検査をし、日頃から見え方など気をつけることが肝心です。

緑内障に関する研究も日々すすんでいます。今後は、特定の遺伝子にアプローチしたり、別の部位にある細胞を用いた再生医療など、かつてなかった治療法が開発されることも期待できるでしょう。

緑内障は点眼薬の種類や治療法にも選択肢が多くあります。発症しても早期に治療を開始すれば、進行を遅らせることのできる疾患です。どうぞあきらめず、日々の治療に専念してください。