チック症とは、頻繁なまばたきや唐突な首振りなどが見られる神経の病気です。以前は心理的な要因が関係していると思われていましたが、脳が発達段階である児童期から青年期に見られるものである事がわかってきました。
本人の意思とは関係なく、体が突然に動く、声が突然出るという症状が一定期間続くもので、自分ではコントロールがしにくいものです。チック症の場合には一過性ですが、長期に渡り慢性化する同症状のものをトゥレット症候群と呼びます。
チック症の原因はよくわかっていませんが、脳の神経伝達物質の感受性に何か問題があることで起こるのではないかと言われています。また、遺伝的な要素もあるのではないかと考えられています。
チック症の治療は薬物療法を用いますが著効することが少なく、日常生活上での周囲のサポートや理解が必要となります。学校や家庭生活に障害が起こらないようにしてあげることが重要です。
チック症でお困りの方にとって、チック症の原因や症状、治療法などを知ることは重要なことです。このページではチック症について詳しく説明しております。
1.チック症とは?
チック症とは人間の神経に係わる症状で、脳が発達している段階にある小児期に顕れることが珍しくありません。成長するにしたがって、症状も消失もしくは軽くなっていくのが一般的ですが、成人後まで長引くケースもあります。長期化した病状は、トゥレット症候群という別の診断名が用いられ、難病に指定されています。
チック症は、年齢が18歳未満であり、期間が1か月以上に渡り続く場合、発症したとみなします。米国精神医学会が出版している『精神障害のための診断と統計のマニュアル』の第4版が、診断する際の基準とされています。
病状が突拍子もなく奇妙で、当たり前に生活するなかで違和感があるので、生活を共にしている家族、とくに最も近い存在である母親が最初に気づくことが多いようです。
チック症は、かつて親子や対人による関係性の問題が指摘されていた時代がありました。お子さんにチックの症状が出た保護者の方は、「自分たちの育て方に問題があるのではないか」という悩みを、心理的な療法を中心に解消していた経緯があります。
最近の研究でチック症は、脳内にあるドーパミン受容体に係わりが深く、脳の機能障害として扱われるようになりました。親子で共通した気質を持つなど、遺伝的な要因は指摘されていますが、決して間違った育児の方法が原因ではないことが認識されています。
チックの発症は通常4−6歳が多く、10−12歳の間に最も症状が重くなることが多いと言われます。女児より男児に多い傾向があると報告されています。
2.チック症の症状
チック症の症状には、音声によるものと動作に特徴を持つものがあります。音声や言語の特徴などの症状を音声チック、体の動きに関する症状を運動チックと呼びます。
音声チックの中でも音声は、音声はとくに意味のない「あ~」や「うっ」などの短い発声やせきばらい、耳障りな奇声、「ばか」や「アホ」、「クソババア」や「死ね」などの不快な罵声、また周囲の人や自身が言ったことば尻を何度も繰り返すなどです。
運動チックの中でも、初期に見られるものに、ひんぱんな瞬き(まばたき)や頭を振る動きがあります。表情に関する症状では、顔をしかめる、唇まわりをなめる、口をあける、鼻をぴくつかせる、などがあげられます。
他にも、筋肉がピクリと動く、肩をすくませる、跳びあがる、身体を前後にまげる、スキップをするなど、目的のない突発的な動きが見られます。
チック症についての知識がなく事前に知らされていなければ、チック症の小児は奇妙な感じに捉えられてしまう可能性があります。「この子は、悪意があるのだろうか?」といった誤解を招くかもしれません。これらの症状が1年以上、続く場合は「トゥレット症候群」として扱われることになります。
またトゥレット症候群にまで発展すると、多動性障害や学習障害など別の症状を併発している可能性も高くなり、さらに支障が出てきます。小児科や心療内科、神経症を専門とする医師のもとで詳しく診察を受けるのが良いでしょう。
3.チック症の原因
チック症の原因は判明しているわけではありません。最も有力な説として脳内の神経伝達物質が関係していると言われており、具体的には基底核でのドーパミン神経が過活動となっていることが唱えられています。ドーパミンは、運動の調節やホルモンの分泌に係わり、また精神面への影響力もある伝達物質です。
また、要因として遺伝的な側面も関与していると言われています。チック症に見られる奇異な動きや筋肉運動は、遺伝子や中枢神経といった、本人の意識とは無関係である本質的なところに原因があるといえます。
直接の原因というわけではありませんが、病状を悪化させる、長期化させる後天的な要因として、情緒面でのストレスが指摘されています。周囲の人々に対する気まずさから、ムリに症状を抑えようとすると、心理的には負担になります。かえって、症状がひどくなることも考えられます。
普段は症状があまり出なくても、例えば学校での授業参観日や習い事での発表会など、大勢の人たちの前で緊張することを強いられる場合、症状が増幅するということもあります。チック症は、精神的な影響を受けやすい病気ともいえます。
4.チック症の治療
チック症の症状があるために日常の生活が困難になる、学校で授業を受けるのに妨げとなる、友人と接触する上で支障がある場合などは、薬物により和らげるという目的で処方されることもあります。
日常生活や学校生活に大きな問題を生じる場合には、治療薬を処方されることもあります。
治療の方法として、以前は行動療法や心理療法が中心にありました。しかしチック症は脳内の神経に関する病気であることがわかってきた現在、それらの療法は主流でなくなっています。ただ完全に否定するわけではなく、2次的なものに関しては従来のように有益となる場合もあります。
チック症の最も有効な対処法は、家族や周りの人々に理解してもらい、チック症の症状を受け入れてもらい、チック症でお困りの方本人の日常生活が円滑に回ることが大切です。
チック症は、成長するにしたがって自然に収束することも多いため、周囲の人が暖かい目で見守ることが大切です。家族や周りの方々、学校での担任の先生などにもチック症の理解を深めてもらう必要があります。あまり神経質にならずに、症状が出ても、優しく見守っていくスタンスも大切だといえるでしょう。
チック症でお困りの方やそのご家族にとって、チック症の症状は日常生活・学校生活でのストレスの原因にもなり、2次的な症状の出現や悪化なども起こします。有効な薬物もほとんどないため、周囲の方の理解とサポートが重要となります。
また、薬物以外では規則正しい生活や十分に睡眠をとるなど生活面での対処が重要であり、緊張を緩和したりストレスを溜めないようにするなどチック症の悪化に効果をもたらすこともあります。
チック症は年齢とともに収束することも多いと言われており、長期的なサポートが重要となります。このような周りの受け入れ、サポートにより症状の増悪防止も期待できます。どうかあきらめないでください。