過敏性腸症候群とは下痢や便秘、あるいはその両方を繰り返してしまう腸の病気のことです。過敏性腸症候群の大きな特徴として、腸には異常がない、つまり「腸がただれている、炎症しているなどの異常がみられない」という特徴があります。
通常、大腸がただれていたり、何かしらの病変が存在していたりする場合には、その病気の症状が便秘や下痢として現れることがありますが、過敏性腸症候群はそういった腸の異常がないにも関わらず便秘や下痢をしてしまうのです。
過敏性腸症候群は日本人の多くにみられ、決して珍しい病気ではありません。下痢や便秘そのものは誰もが経験する症状であり、それ自体は病気ではないため、下痢や便秘があっても病院に行かない方もたくさんいます。
しかし、やはり下痢や便秘が続いてしまうような過敏性腸症候群はそのままにしておくと、日常生活に支障をきたすようになるので、改善したほうが望ましいですよね。
このページでは、過敏性腸症候群でお悩みの方のために、過敏性腸症候群の原因や症状、治療法や対処法について詳しく説明しております。
1.過敏性腸症候群とは
過敏性腸症候群とは、腸に炎症や腫瘍などの病気がないにも関わらず、2ヶ月以上お腹の違和感や腹痛とともに、便の性状の変化(下痢や便秘など)または回数の変化などが起こることをこう呼んでいます。
通勤電車に長時間乗る必要があったり、仕事で長時間の会議などの席を外せないものがある際に、困る方が多いようです。女性の方がややなりやすく、年齢が上がるにつれて過敏性腸症候群の頻度は減少します。
お腹の不調で病院を受診する大人の約20−30%程度はこの過敏性大腸炎であると言われていおり、最近では子供にも頻度は低くなるが見られる病気の一つです。
ストレスと大変関連の深いものであると言われており、胃腸の症状や精神的な睡眠障害や自律神経症状、めまいや肩こりなども併発することが多いと言われています。
腹痛やお腹の違和感は排便によって緩和されるのも、特徴の一つです。
2.過敏性腸症候群の原因
過敏性腸症候群の原因ははっきりとはわかっていませんが、先ほどもお話したようにストレスとの関連が強く、ストレスホルモンが脳の下垂体と呼ばれる部分から分泌されることによって腸が刺激されるのではないかという説が有力です。
また、この刺激が繰り返されることにより腸が刺激過敏になり、少しの刺激でも症状を引き起こしてしまうという悪循環を生んでいるのではないかとも言われています。他にも細菌やウイルスにより腸炎を引き起こした後はなりやすい病気であると言われています。
しかし、この過敏性腸症候群は病気にかかりやすい方によく似た性格があると言われています。自分の感情をうまく人に伝えられない、人に意見することが苦手な人は
この病気にかかりやすいと傾向にあります。
現代において、子供のストレスから起こる腹痛の原因もこの過敏性腸症候群が関係していることが多く、人間関係や受験などのストレスから症状を引き起こしやすくなっていると言われています。
3.過敏性腸症候群の症状
過敏性腸症候群はその症状から「下痢型」、「便秘型」、「混合型」の3つの種類に分けられます。過敏性腸症候群を治すためには、まずは自分がどのタイプであるのかを知っておくことが重要になります。
「下痢型」、「便秘型」、「混合型」のそれぞれの症状は以下の通りで、このような症状が1ヶ月のうちに3日以上あり、3ヶ月以上続く場合は過敏性腸症候群と診断されます。
下痢型
- 突然おなかがゴロゴロと痛くなり、トイレに行きたくなる
- 下痢(水の様な便や泥状の便)が多い
- 緊張したときや不安が強いときに下痢がひどくなる
便秘型
- 硬く、うさぎのフンのようなコロコロとした便が多く、残便感もある
- ストレスや緊張を感じると便秘がひどくなる
- おなかが張ったような感じや不快感がある
混合型
- お腹の痛みや不快感があり、下痢をしたり、便秘をしたりを繰り返す
- 緊張やストレス、不安を感じるとトイレに行きたくなり、下痢や便秘を交互に繰り返す
4.過敏性腸症候群の治療方法
過敏性腸症候群の治療は、主に病院で医師から出されるお薬と日常生活で対処していくべきことの2通りの方法があります。
1)薬物療法
過敏性腸症候群の治療では、下痢型、便秘型、混合型、それぞれのタイプに合わせたお薬を用いた治療を行います。
下痢型
下痢型の過敏性腸症候群では、しばしばセロトニンという神経伝達物質が過剰に作用してしまうことで下痢が引き起こされることがあります。そこで、このセロトニンとよばれる物質の作用を抑えるお薬を主に使用します。
また、便の水分を吸収することで便を硬くするお薬を使用することもあります。
便秘型
便秘型の過敏性腸症候群では、便がスムーズにでるように症状に合わせた下剤を用いて治療することがあります。下剤の種類としては、便を柔らかくするお薬や、腸の運動を活発にして便が排せつされやすくするようなお薬があります。
混合型
混合型の過敏性腸症候群では、腸の運動を調整するお薬や、高分子重合体といわれるお薬を使用することが多いです。
高分子重合体のお薬は、硬い便には水分を吸って腸を通りやすくさせ、ゆるい便に対しては硬めの便にするように働くため非常に有効なお薬だと考えられています。
2)日常生活での注意点、対処法
過敏性腸症候群を治すために日常生活でできることはたくさんあります。むしろ、はじめはお薬による治療よりも、日常生活を見直すことが過敏性腸症候群を改善する近道かもしれません。
過敏性腸症候群は、その名前の通り、「腸が様々な刺激に対して過敏になっている状態」です。その刺激の要因として、ストレスや不安感、緊張などの精神的な事柄が大きく関係していると考えられています。
腸と脳は神経で繋がっているため、ストレスなどを脳が感じるとその刺激は腸に及び、便秘や下痢などの症状を引き起こすのです。
よって、自分のストレスの原因となっていることを理解し、ストレスを溜めないような生活を送るようにすることはとても大切です。軽い運動を日常生活に取りいれ、ストレス解消をしたり、十分な睡眠や休養をとって規則正しい生活をするようにしましょう。
またストレスの原因を取り除いた後も、症状が大きく改善しない場合には自律神経障害やうつや不安などを併発している可能性があるため、心療内科もしくは精神科への受診を考慮した方がいいでしょう。
また、刺激の多い食事の内容も過敏性腸症候群の原因となりますので、脂質の多い食事や、香辛料やアルコール、カフェインなどの刺激物を過度に摂取しないようにしてください。
過敏性腸症候群は便秘や下痢、あるいはその両方を伴う症状であり、仕事の上での外せない会議や通勤途中での便意や腹痛などの症状は社会生活や日常生活に影響を及ぼします。
またその症状はなかなか人に相談することもできないものであり、一人で悩んでしまいがち、医療機関への受診をためらったりということが多く見られます。しかし、過敏性腸症候群で悩んでいる方は少なくありません。
過敏性腸症候群は、時間をかけて日常生活を改善したり、お薬による治療を行うことで、よくなる病気です。どうぞ、お一人で悩まないでください。
日頃から規則正しい生活を送り、十分に休養と睡眠をとって、ストレスを溜めないような生活を心がけるようにしましょう。