口腔内心身症(こうくうないしんしんしょう)とは、口の中に何らかの不快感があるのに、医療機関を受診しても異常が見つからない病気です。
口腔内心身症の原因は、自律神経の乱れや精神的なストレスと考えられています。そのため、主な症状は口の中で起こりますが、めまいや頭痛など全身的な症状が現れるケースもあります。
口腔内心身症では、心身両面からの治療が必要となります。重きを置くべきはこころの治療なので、治療期間が少し長くかかってしまう可能性もあります。しかし、口腔内心身症の再発を防ぐためにも、あせらず口腔内心身症の治療を進めていくことがとても重要です。
口腔内心身症を治すためには、口腔内心身症の症状・原因・治療について知ることが大切です。このページでは、口腔内心身症を治したい方のために、口腔内心身症の症状・原因・治療について詳しく説明しております。
【目次】
1.口腔内心身症とは?
口腔内心身症とは、口の中に異常な感覚や痛みを感じる病気です。しかし、原因は「こころ」にあるとされています。
口腔内心身症でお困りの方の多くは、最初に歯科を訪れることでしょう。口に関する異常を治しにいくのですから、その選択は当然と言えます。
しかし、そのときに異常が見つからなかったり、歯科的な治療をしても不快な症状がおさまらなかったりすることがあります。そういう場合、異常の原因が精神的なものに由来しているのではないかと疑われ、「口腔内心身症」と診断されます。
口腔内心身症は、お困りの方が多い割に認知度が低い病気です。それは医師も同様で、「歯科領域」と「心理領域」がすぐに結びつかない場合もあります。
そうなると「口腔内心身症」という病名にたどりつかず、治療に長い時間がかかり、つらい思いをしてしまう恐れがあります。そのため、口腔内心身症の知識や治療実績がある医師を探すことが、この病気を治すための鍵となります。
2.口腔内心身症の症状
口腔内心身症の症状は、主に口の中に現れます。ただ、原因は心理的なものからきているので、その影響が全身に及ぶ場合もあります。
口腔内心身症で多くの方がお困りの症状に、舌に異常を感じる「舌痛症(ぜっつうしょう)」があります。舌痛症では、舌の先や両サイドに痛みが現れます。舌に痛みが生じる病気は口内炎など様々ありますが、舌痛症では「食事中は痛みがましになる」という特徴があります。
口腔内心身症で現れる症状に、以下のようなものが挙げられます。
(1)口に現れる症状
- 舌がピリピリする、舌がしびれる、舌が痛い(舌痛症)
- 自分の口が異常にくさいと思い込んでしまう(口臭症)
- 異常はないのに歯が痛い(非定型歯痛)
- 口の中に異物があると感じる(口腔内セネストパチー)
- 口腔内になんとも言えない違和感がある、唾液がネバネバする、味覚がおかしいなど(口腔異常感症)
(2)全身に現れる症状
- 眠れない(不眠症)
- 頭が痛い(頭痛)
- めまいや耳鳴り
- お腹の調子が悪い
3.口腔内心身症の原因
口腔内心身症の原因は、心因的な問題が大きいと考えられています。
しかし、それ以外にもいくつもの危険因子が存在し、いくつもの要因が重なることで口腔内心身症の発症が誘発されると考えられています。
(1)身体的要因
歯科治療の影響・亜鉛欠乏・貧血など
(2)心理的要因
ストレス・恐怖・不安・緊張など
(3)環境的要因
人間関係・気温の変化など
(4)性格的要因
几帳面・完璧主義など
上記の(1)~(4)以外にも、口腔内心身症を発症してしまう原因として考えられているものがあります。それは「脳の機能異常」です。脳内神経伝達物質の乱れや口腔内に関する情報処理過程で異常がおきて、不快な症状が生じてしまうのではないかと言われています。しかし、どうして脳がそうなってしまうのかについてはまだわかっていません。
4.口腔内心身症の治療
口腔内心身症の治療は、口腔内に現れている症状だけでなく、こころの問題も同時に治療していく必要があります。
口腔内心身症の治療は主に歯科で行われますが、治療が終わっても不快感が続くような場合は、こころに問題がある可能性を視野に入れて、心療内科や精神科が紹介されるケースもあります。
(1)歯科的治療
口腔ケアをしたり、かみ合わせを調整したり、問題があると思われる場所を治します。歯ぎしりをする方も多いので、マウスピースを使用することもあります。
(2)薬物療法
不快な症状を和らげるために、症状に合わせた薬が処方されます。根本的な治療というよりは対処療法となります。
(3)心理療法
緊張や不安を取り除いたり、考え方のクセを修正したりします。心を穏やかに保てる状態を目指します。
口腔内心身症は、心と体の両方に関わりがある病気です。心と体を良い状態にすることにより、口腔内心身症の症状が改善する事が多くあります。口腔内心身症は、しっかりと治療をすれば良くなる病気です。どうぞあきらめないでください。