アスペルガー症候群でお困りの子供さん、大人の方は想像以上にたくさんいらっしゃいます。アスペルガー症候群とは、自閉症の一つのタイプに分類されます。他人との関係がうまく取れない、こだわりが強い、人とのコミュニケーションに問題があり他人との間で孤立することも多いのがアスペルガー症候群の特徴です。

アスペルガー症候群は、子供にも大人にも見られるものであり、知的障害を持ち合わせていませんが、物事への興味やコミュニケーションに障害をきたします。症状はそれぞれであり、障害の程度も軽度から重度までさまざまです。他人からは“少し変わった人”と評価されることが多いです。

アスペルガー症候群の発生原因は不明で、いじめの対象になりやすく周囲の人によるサポートが必要であると言われています。

アスペルガー症候群に対する効果的な薬物療法などはほとんどなく、うつ症状などの2次障害に対して軽減させる薬物を処方される場合があります。

アスペルガー症候群でお困りの方には、カウンセリングによる治療などを行いますが、改善しない場合が多々あります。このため、一人でお悩みになる方、ご家族のご不安とご負担はとても大きいです。

アスペルガー症候群でお困りの方には、アスペルガー症候群について知る事が大切です。このページでは、アスペルガー症候群でお困りの方に、アスペルガー症候群の原因・症状・治療について詳しく説明しております。

1.アスペルガー症候群とは?

アスペルガー症候群は、広汎性発達障害に分類される発達障害です。広汎性発達障害には他に自閉症やレット症候群、小児期崩壊性障害などが含まれます。

また、現在では自閉症や高機能自閉症、アスペルガー症候群などの境界が曖昧な幅広い自閉症を自閉症スペクトラムとして、まとめた考え方がなされています。自閉症スペクトラムの基準には社会性の障害、言語コミュニケーションの障害、想像力の障害の3つがあると言われています。

アスペルガー症候群では、コミュニケーション能力の障害や強い固執性、こだわり、興味の範囲が限定的であることなどから、他者との関係性を上手く作れないことが問題となります。このような特徴は自閉症と類似していますが、アスペルガー症候群では知的障害がみとめられません。

2.アスペルガー症候群の症状

アスペルガー症候群の症状としては、社会性の障害、コミュニケーション能力の障害、想像力の障害の3つが主となります。

これらは自閉症スペクトラムに共通してみられる症状ですが、アスペルガー症候群の症状では従来型の自閉症と比べて知能低下(精神遅滞)がみられないのが特徴です。そのため、勉強もできるし話もできることなどから、障害の存在に気が付かれないこともあります。

社会性の障害としては、暗黙のルールが理解できない、思っていることを正直に口に出してしまうなどの特徴があります。また、他者との距離感をつかむのも苦手で、相手が嫌がっているのに積極的に話しかけてしまったり、反対に1人遊びにふけることが多くなったりします。

コミュニケーションの障害としては会話がうまくかみ合わない、話し方が回りくどいといった症状もみられます。また、曖昧な表現の意味をくみ取れないことや、目配せやジェスチャーを理解できないこともあります。想像力の障害としては、他者の立場になって考えることができないほか、それが融通の利かなさ、強いこだわりとなって現れることもあります。

そのため、いじめの対象となったり、被害妄想や対人恐怖などを起こし、2次的にうつ病を発症したりすることもあります。

3.アスペルガー症候群の原因

アスペルガー症候群の原因は、自閉症などと同じく、原因がはっきりとわかっているわけではありません。

アスペルガー症候群の特徴である社会性の障害、コミュニケーション能力の障害、想像力の欠如などは、いずれも認知機能の発達の障害によるものであるため、何らかの脳機能の障害が原因であるとは考えられています。

しかし、その脳の機能障害部位については、前頭前野や扁桃体、小脳、脳幹などさまざまな説があり、今も研究段階であります。脳機能障害の発生機序については、自閉症スペクトラムとも呼ばれるように、その症状は人によって差があり、知的障害の程度も異なっていることから、いくつかの因子が複合的に絡み合っていると考えられます。

家族内での発症率も高くなるように遺伝子的、または環境などの要因が関係していると言われており、妊娠期間や出産状況などの影響も推測されています。また、男女比で見てみると、男児のほうが女児の約3倍、発症しやすいことも知られています。

4.アスペルガー症候群の治療

アスペルガー症候群の治療については、その発生機序や症状を引き起こしている脳機能障害の原因部位も明らかとなっていないことから、治療法は確立されていないのが現状です。

抑うつや不安障害などの二次障害に対して対症療法として、抗うつ薬や気分安定薬が処方されることはありますが、アスペルガー症候群自体に対する治療薬として承認を受けている薬剤はまだありません。 

アスペルガー症候群の治療、カウンセリングのような心理療法や認知行動療法などによって社会生活の中での行動の経験、学習を促すことが主なアプローチとなります。例えば、ソーシャルスキルトレーニングと呼ばれる療法は、実際の社会的場面を想定し、どういった対応をとればよいのかというのを実践的に身につけていくものです。

最近では、さまざまな支援方法が学校や社会などでも広まっており、曖昧な表現を避ける、ルールを明確にするなど環境を整備することにより、アスペルガー症候群にお困りの方でも、適応できるように支援方法が模索されています。

アスペルガー症候群でお困りの方は、学業に関してもばらつきがあり優秀な人もいれば、全体的に学習が不得手な場合もあります

優秀な人においても得意な分野はさまざまですが、計画を立てることが難しい人が多いようです。しかし、小学校高学年などになるとサポートが必要となるケースもあります。

常識や暗黙の了解といったものの理解が難しいアスペルガー症候群に対しては、こうして1つ1つの場面に応じた対応を覚えていく治療法が効果的である場合が多いです。

5.アスペルガー症候群と自律神経

アスペルガー症候群の場合、自律神経のバランスが乱れることが多くあります。このため、精神的に不安定になったり、イライラしやすくなったり、やる気がなくなるなどの精神的な症状が出ます。また、動悸・息苦しさ・不眠・食欲不振・吐気・・・など自律神経失調症の症状を伴うことがあります。

自律神経の状態は、検査ではわかりにくいので、原因不明と言われ、精神安定剤などのお薬が出る場合もあります。また、極端な思考に走りやすいために、被害妄想や対人恐怖などに陥りやすく、うつ症状や統合失調症のような症状が起こることもあります。

アスペルガー症候群の治療では、自律神経の状態は見落とされがちです。自律神経を安定させることがとても大切です。日常生活によるストレス・疲れ・頑張りすぎなどで自律神経は大きく乱れます。この結果、アスペルガー症候群の症状が強くなります。

アスペルガー症候群でお困りの方にとって、コミュニケーションや社会性の欠如は、成人してからの社会生活に大きな影響を及ぼす大きな問題と言えるでしょう。しかし明確な治療法が現在に至っても、確立されていないのが現状です。

とはいえ、自律神経の乱れからアスペルガー症候群の症状を悪化させたり、他の2次障害などの影響を及ぼすこともあります。睡眠を十分にとる、ストレスを回避するなど自律神経の影響を少しでも取り除くことで、改善されることもあります。

またアスペルガー症候群でお困りの方の周りを取り巻く環境を、整備することも重要な課題です。家族や友人などの理解とサポートは最も大きな要因と言えるでしょう。アスペルガー症候群についての正しい知識を得ることは、大きな1歩です。どうぞ諦めないで、できることからはじめてみましょう。