強迫性障害は、以前は強迫神経症と呼ばれていたもので、不安な気持ちがもとになって起こる精神疾患です。ふと浮かんだ不快な思考にとらわれ、頭から離れない状況に陥ります。それは冷静に考えると、「ばかばかしい」としか思えない類のことなのですが、やめられなくなるのです。

不安という情緒から発生していて、一度支配されてしまうと抜けだすことができず、仕方のないことばかりに思考をめぐらせてしまいます。そのために、生活するうえで悪影響が出ることも多々あります。

具体的には、手が汚れているような思考が頭から離れず何度も手を洗ったり、ガスコンロの火を消していないかもしれないという考えが消えずに何度もコンロを確認するなどの行為などがこれに当たります。

その1/3はこれらの不安を他人にも確認、また強要することもあります。この強迫性障害の約30%はうつ病を併発しているといい、治療には時間がかかります。

強迫性障害を治すためには、強迫性障害の症状・原因・治療について知ることが大切です。このページでは、強迫性障害を治したい方のために、強迫性障害の症状・原因・治療について詳しく説明しております。

1. 強迫性障害とは

強迫性障害とは、無意味な考えを打ち消すことができずに、不安な状態が続く不安障害のひとつです。常識で考えると、「そんなこと、あるわけない」と否定できるような妄想じみたものです。

強迫性障害のよくある症状例として「コンロの火を消したかな?」「玄関のカギは閉めたかな?」と出先や電車・バスの中などで気になります。不安でたまらず引き返してみると、きちんと火は消され施錠もされています。安心して出かけると、再び同じ考えが頭に浮かんでくるのです。

このような事を数回、繰り返せば「過剰に心配しすぎている」と思うでしょう。理屈では理解できても考えることを止められず、苦しい気持ちが続いていくのが強迫性障害の特徴です。

その患者層は社会的背景・宗教・地域などによる差はなく、生涯有病率は2.5%と言われています。男女差はなく、35歳以上での発症はまれであり、20歳以下での発症がほとんどであると言われています。

2. 強迫性障害の症状

強強迫性障害の症状には、複数のパターンがあります。例えば、意図せず人に危害を加えてしまうのではないか、といった衝動性に関する強迫観念です。

また、他人や公共のもの(電車のつり革など)が不潔に思えて触ることができず、触れてしまうと何度も手を洗わずにはいられない、という行為です。

ちょっとした出来事に固執して「なぜそうなったのか」と理由を追求し人に聴きまくる、自分の行いが正しかったか、あるいは完璧であったかが気になり、確認せずにはいられなくなる、作業などで何度も数えて計算しないと気が済まない、という行動も強迫性障害の症状のひとつです。

強迫性障害で起こりうる症状は様々なものですが、最も多いのは不潔に対する心配です。他に、自分や人が傷つけられるのではないかという心配や、正確性を追求しすぎる、数字にこだわる、無用なものへのこだわり、など様々なものです。

たいていの場合は、強迫観念と呼ばれるものに対して強迫行為が組み合わさることが多く、例外として性的なものに関する強迫観念なども存在します。これは本人が考えたくないようなせいのイメージが沸き起こるものです。(近親相姦になるのではないか?など)

強迫性障害は発症すると回復と悪化を行き来しながら慢性化しがちです。重症になるとこの強迫行為が長くなり、社会生活や日常生活に影響を及ぼします。時には他人への確認を求めたり、これらの確認行為を手伝わせたりすることもあります。

3. 強迫性障害の原因

強迫性障害の原因は、完全には解明されていないのが現状です。ひとつは、心因性や環境的な要素が考えられています。しかし、何かが引き金となり発症するというよりも、もともと原因となるものを持っていて発症するという傾向があります。

強迫性障害を発症しやすい気質はあります。何事にも細かく几帳面である、完璧主義者で、いいかげんなことはしない、という方は注意が必要でしょう。遺伝的な要素または家族環境なども影響しているのではないかと言われていますが、詳細はまだわかっていません。

研究が進む中で、原因として有力とされているのが脳内の働きに関する異常です。具体的に、大脳基底核(だいのうきていかく)や大脳辺縁系(だいのうへんえんけい)の障害、神経の伝達物質であるドーパミンやセロトニンが、うまく機能していないことです。

そのため、パーキンソン病やトウレット症候群などのドーパミンに関連した疾患との関連性が指摘されています。今後の研究が待たれるところですね。

精神疾患である「うつ病」や、神経系の障害である「統合失調症」と症状が重なる場合もあります。まずは専門の医療機関で詳細に検査し、病名を特定することが先決です。

また不況や病気の流行など社会情勢や、仕事や対人関係などのストレス、妊娠出産などのライフイベントなどが発症のきっかけになることが多いと言われています。

4. 強迫性障害の治療

強迫性障害の治療には、薬物を使用する方法と認知行動療法があります。

認知行動療法では、「例えば、強迫性障害で「手を洗う」行為を限りなく繰り返す症状があります。実際に手は汚れているわけでなく、「洗いたい」という衝動が止められないのです。

そこで、あえて手を汚し「洗いたい」気持ちを抑える訓練をします。洗う回数を減らしていき、気にならないレベルまで意識をコントロールするのです。何度も数えることがやめられない方は、数えた回数を記録し、少しずつ行為そのものを減らす操作をします。

最終的には、不安な気持ちが生じない状態を維持できることが目的です。ただ現段階では専門分野の医師が少なく、今後の普及がのぞまれるところです。薬の服用と並行して、ふさわしい方法が選択できる状況になれば理想的です。

強迫性障害の症状は病気により起こるもので決して、性格などから起こるものではないことを、本人も家族も認識することが大切です。強迫観念が強くなると周囲の人に確認を要求します、繰り返し起こるために周囲の人は疲れてしまう傾向にあります。

基本的には本人の要求を受け入れないことが重要ですが、(強迫観念からくるものであって確認の必要がないとわからせることが大切)そのことによりさらにストレスが溜まって悪循環になることはあります。これらについての理解と受け入れが重要です。

また治療には時間がかかるために、病院への通院などを自身で中断してしまわないことも大切です。服薬の自己中断などをしないようにサポートを得ることも大切ですね。

強迫性障害でお困りの方にとっては、不安要素が拭えないことから確認行為を繰り返してしまうことに周りの理解が得られず、苦しい思いをされている方もいます。周りや家族の理解も重要なポイントです。

強迫性障害は、脳内の神経伝達物質の障害ですが、不安が強いことから不安定で苦しい思いをされることでしょう。しかし研究も進んでいることから、新たな成果も期待できます。どうぞあきらめず、効果の得られるよう治療に専念してください。