発汗は身体が体温調節をする際に起こる自然な現象です。暑いときや激しいスポーツをしたとき、緊張したときに汗をかくことは普通のことですが、汗をかくような状況にないときに多量の汗をかく方がいらっしゃいます。このような症状を多汗症と言い顔に多量の汗をかく症状のことを顔面多汗症と言います。

多量の汗をかくことはご本人にとって不快と感じる方も多く、またその症状が顔に現れることにより目立ちやすいため、身体的な苦痛だけでなく精神的な苦痛も伴います。他人には理解されにくく人との接触を避けるようになる場合もあり、対人関係など日常生活に影響が出てきます。

顔面多汗症にはさまざまな治療法や対処法があります。そのためには、顔面多汗症の症状・原因・治療について知ることが大切です。このページでは、顔面多汗症を治したい方のために、顔面多汗症の症状・原因・治療について詳しく説明しております。

1.多汗症とは

多汗症とは、通常では汗をかかないような状況で多量の汗をかく症状です。ヒトは汗をかくことで体温調節を行っています。

暑い、激しい運動をした際などに体温調節のために汗を書く場合(温熱性発汗)と、緊張しているなど交感神経の働きが活発になって汗をかく場合(精神性発汗)があります。

多汗症とは、後者の精神性発汗の一つに属しています。

しかし、同じような状況下で他の人と比べて多量に汗をかく方がいらっしゃいます。暑かったり、緊張していたりする場合に多量の汗をかく方は「汗かき」、汗をかくような理由がないにもかかわらず多量の汗をかく方は「多汗症」と区別されます。

多汗症は、汗が滴り落ちたりベタついたりして不快感があります。また、通常では汗をかくような状況ではないのに自分だけ多量の汗をかいているので、他人の目やにおいが気になります。

多汗症は汗のかき方によって次のように分けられます。

  • 全身性多汗症:全身から多量の汗が出る
  • 局所性多汗症:身体の一部から多量の汗が出る

局所性多汗症は、特に手のひら、足の裏、脇の下によく見られるのですが、顔だけに汗をかく方もいらっしゃいます。

また、多汗症の原因となる病気の有無によって次のように分けられます。

  • 原発性:多汗症の原因となるような病気は認められない
  • 続発性:何らかの病気が原因となって多汗症を起こしている

原発性多汗症でお困りの方は、活動的な年齢層の方が多く、精神的苦痛を感じていらっしゃるケースが多く見られます。多汗症のために不安や恥ずかしさを感じ、人と接することを避けることもあります。

多汗症の原因となるような病気がなく、6ヶ月以上、身体の一部から多量の汗が出る場合、次のような項目を基準に判断します。

  • 25歳以下で症状が出始めた
  • 左右対称に汗をかく
  • 睡眠中は汗をかかない
  • 1週間に1回以上過剰な汗をかく
  • 家族に多汗症の人がいる
  • 多量の汗によって日常生活に支障をきたしている

上記の項目は日本皮膚科学会の原発性局所多汗症診療ガイドラインによるもので、このうち2項目以上該当すると原発性局所多汗症と診断されます。睡眠中に多く汗を書く方がいらっしゃいますが、その兆候は含まれないのが特徴的です。

2.顔面多汗症の症状

顔面多汗症とは、局所性多汗症の一つで、顔に多量の汗をかく症状です。顔面多汗症の特徴は、蒸発しにくくベタベタとした汗であることです。

普通、汗腺は身体に必要なミネラルを再吸収し、サラサラとした汗を分泌するのですが、顔面多汗症では汗腺の機能が低下しているため、ミネラルの再吸収がうまくできなくなります。そのため、ミネラルの混じったベタベタとした汗となるのです。

顔にベタベタとした汗をかくため、不快感があり、メイクが崩れやすい、汗が滴り落ちて書類を汚すなど、日常生活に影響が出てきます。

顔面多汗症では顔に多量の汗をかくため、目立ちやすく、他人の目が気になります。汗をかくような場面でもないのに顔に多量の汗をかいていると、周囲の人から具合が悪いのではないかと思われたり、異常な緊張感があるのではないかと思われたりすることもあるでしょう。

3.顔面多汗症の原因

(1)続発性の顔面多汗症の原因

神経疾患、代謝異常、感染症などさまざまな病気や薬剤性などが考えられます。

①自律神経失調症

自律神経のうち発汗を促す交感神経が異常に興奮することで、顔に多量の汗をかくことがあります。

②更年期障害

更年期ではホルモンのバランスが崩れることにより、暑いわけではないのに多量の汗をかくことがあります。

③糖尿病

高血糖で末梢神経がダメージを受けると、体温のコントロールがうまくできなくなり、暑くなくても顔に多量の汗をかくことがあります。

(2)原発性の顔面多汗症の原因

病気が原因でない場合、運動不足や自律神経の乱れ、遺伝などが考えられます。

運動不足

運動不足や涼しい場所に長時間いるなどで、ほとんど汗をかかない状態が続くと、心臓から遠い部分の汗腺が働かなくなり、動きの多い顔の汗腺だけが汗を出して体温調節を行うようになります。

自律神経の乱れ

ストレスによって自律神経のバランスが崩れ、発汗を促す交感神経が過敏になり、多量の汗を出すようになります。

③遺伝

重症の多汗症の場合は、遺伝も考えられます。

④その他

偏った食生活、喫煙、飲酒、不規則な睡眠などがあります。

4.顔面多汗症の治療

続発性顔面多汗症の場合は、原因となる病気の治療をすることが大切です。病気が改善すれば顔面多汗症も改善する可能性があります。

原発性顔面多汗症の場合は、内服薬・外用薬・注射・手術などによる治療がありますが、日常生活での対処も効果が現れることもあります。

(1)神経遮断(しゃだん)薬

アセチルコリンの放出を抑える薬で全身に効果がありますが、口の渇きや眠気などの副作用があります。

(3)外用薬

塩化アルミニウムを含む薬が汗を抑えます。副作用として皮膚の炎症を起こすことがあります。

(4)漢方薬

自然治癒力を高める働きがあり、汗を抑えることができます。

(5)手術

(6)日常生活での対処法

薬物や手術療法などを主にお話ししましたが、日常生活の中で気をつけることで、汗の量などをコントロールすることも一つの対処法です。以下にいくつかご紹介しましょう。

  • 運動してうまく体温調節ができるようにする
  • ・気分転換をはかり、ストレスを発散する
  • ・刺激の強い食べ物は控える
  • 半側発汗法:体の一部を圧迫すると、そちら側の汗の量が減少する体の働き
  • ・首周りを保冷剤などで冷やす
  • ・制汗のためのシートやスプレーを使用する

顔面多汗症でお困りの方は、精神的な悩みが大きく対人関係に影響を及ぼすこともしばしばです。しかし、治療法があるということを知らない方も多く、治療をせずに放置されることも多いようです。

多量の汗をかく原因となっている病気がある場合には、原因となる病気を治療する必要がありますので、まずは原因となる病気があるかどうかを確認する必要があります。

病気が原因ではない顔面多汗症の場合は、自律神経の乱れが大きくかかわっている場合が多くあります。専門的な治療法や自分でできる対処法もいろいろあり、日常生活の工夫で改善することもできます。どうぞあきらめないでください。