口腔内乾燥症は、唾液の分泌量が減ることにより口腔内が渇く症状で、別の呼び名をドライマウスといいます。唾液には重要な役割がいくつもあり、きちんと分泌されなくなると、さまざまな困った状況を引き起こします。
全身性の疾患や神経または薬物によるもの、唾液を作る唾液腺がうまく働かないなどが原因となります。また年齢を重ねると、唾液が減ってくる傾向はあります。他にも塩分の多い食べ物を食べたあとは、喉が渇くといった経験は誰しもあるでしょう。
しかし口腔内乾燥症は、そのようなレベルを超えて口腔内にトラブルを引き起こします。例えば、口の中の痛みや味覚障害、飲み込みにくさなどを生じます。
口腔内乾燥症は、原因に対する薬物の投与や調整、または人工唾液など症状に対する対処療法、日常生活上での対処と口腔内の衛生管理などが主な治療・対処法となります。
口腔内乾燥症を治すためには、口腔内乾燥症の症状・原因・治療について知ることが大切です。このページでは、口腔内乾燥症を治したい方のために、口腔内乾燥症の症状・原因・治療について詳しく説明しております。
【目次】
1.口腔内乾燥症とは
口腔内乾燥症とは、唾液量が減少し口腔内が乾燥する疾患です。様々な理由により唾液が分泌されにくくなり、口の中の渇きを感じます。
唾液は大唾液腺、小唾液腺といった複数の分泌腺から、少しずつ出されています。通常ですと、1日で合計1リットル以上の唾液が分泌されています。唾液には、いくつもの重要な役目があります。次にご紹介しましょう。
◆唾液のもつ役割
- 食べ物の咀嚼(そしゃく)や飲み下しを助ける
- 口腔内の粘膜を保護する
- 消化を助ける
- 口腔内を洗浄する、細菌の繁殖を抑える
- 酸化した口腔内を中和させる
上記のような働きがあることから、唾液の分泌量が減少してしまうことは、口の中の乾燥だけでなく、痛みや味覚障害などのさまざまな支障が生じることになります。もし、口腔内の感想でお困りの様なら医師に相談するようにしましょう。
2.口腔内乾燥症の症状
口腔内乾燥症の症状は、唾液の分泌量が減ることから起こります。口腔内に違和感がある軽い症状から、重症化していくと別の疾患を発症することにもなります。
口腔内乾燥症の症状には様々なものがありますが、大きく分類すると以下の3つに分けられます。
(1)口腔内の異常
口の中に渇きを覚えることから、夜中に目を覚ます、話をしにくくなる、などの影響が出てきます。また、口腔内にねばつきを感じ、口臭が起こります。舌も乾燥しますので、ひび割れが生じて痛みを感じるようになります。
食事の際に味覚が鈍くなったり、飲み込みがスムーズにいかないことから嚥下障害(えんげしょうがい)を起こしやすくなります。ご高齢の方にとって嚥下障害は、誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)から肺炎につながる可能性があり注意が必要です。
(2)虫歯や歯周病への影響
口腔内乾燥症の症状があらわれると、抗菌作用が充分でなくなることから、虫歯や歯周病に対するリスクが高くなります。食事のあと、口の中は酸性になります。口腔内乾燥症では、中和させてくれる唾液量が少ないので虫歯になりやすくなります。
他にも唾液の量が充分でないと、本来なら飲み込まれるべき食べ物の残りカスが、歯と歯ぐきの間に多く残留するため、歯周病菌が繁殖しやすくなります。
(3)菌に感染しやすくなる
口腔内乾燥症では唾液が少なくなるため、菌に対する抵抗力も落ちてくるため、口腔カンジタ症などにかかりやすくなります。カンジタ菌とは珍しい菌ではなく、常に口腔内に存在しているものですが、抵抗力が落ちると感染しやすくなるのです。
口腔内だけでなく、カンジタ性の口角炎も症状のひとつです。口角が乾燥してひび割れができますと、食事や会話などで口を開け閉めするたびに痛みが走ります。日常的によく動かす部位ですので、治癒するには時間を要することになります。
3.口腔内乾燥症の原因
口腔内乾燥症の原因は、直接的なものから自覚しにくいものまで、いくつかあります。先述の通り、加齢にともない唾液の分泌量が減っていくのが原因のひとつです。それ以外でも下記の原因が考えられます。
(1)口呼吸の影響
鼻からでなく、口を開けて呼吸すると唾液が外気に触れ蒸発し、口の中は乾燥します。あえて口呼吸をしなければならない背景には、習慣、耳鼻咽喉系の疾患をかかえているケースがあります。アレルギー性の鼻炎や副鼻腔炎(ふくびくうえん)、かぜによる鼻づまりなどです。
単に口呼吸をするのがクセで、習慣となっているのであれば、鼻呼吸をするよう改善するのが得策です。ただ、ご自分では気づかないことが多いので、身近な方に聞き、指摘してもらうとよいでしょう。
(2)薬剤の副作用
口腔内の乾燥を副作用とする薬剤があります。薬による副作用の場合には、薬の効能などを考慮し調整してもらう必要があります。担当の医師と相談しましょう。
(3)自律神経の不調
ストレスなどで、自律神経の乱れなどが起こると、交感神経が過剰に働き唾液の分泌量が減ることがあります。
(4)シェーグレン症候群の症状として
自己免疫疾患のひとつであるシェーグレン症候群には、特徴として粘膜を乾燥させる症状があります。乾燥する部位は口腔内に限らず、鼻や喉、気管支、眼球内の角膜などと広範囲におよびます。
4.口腔内乾燥症の治療
口腔内乾燥症の治療は、何が原因となっているかで方法は異なります。原因疾患を根本的に治療するのがひとつの方法です。他方で、口腔内の乾燥している状態を緩和する対処療法や、ご自分でできる対策や予防法があります。
(1)こまめな水分補給
渇きを感じてからではなく、そうなる前に水分を補給することが大切です。一度にたくさんの量を飲むのでなく、少量ずつこまめに摂取するのが良いでしょう。
身体を冷やさないよう、暑い日でも常温の水をとるのが得策です。
(2)リップクリーム、リップジェル
乾くのは喉や口の中だけではありません。口角やくちびるが乾燥するのを防ぐには、リップクリームが有効です。無着色で無香料のワセリン、口の中に入っても気にならない天然成分のものを選ぶとよいでしょう。
(3)人工唾液、口腔保湿剤
シェーグレン症候群、放射線治療の影響によるドライマウスには、人工唾液や保湿剤が適用されます。液体タイプや使いやすいスプレータイプなど、選択することができます。唾液の分泌が減る食間に使用するのが効果的です。
(4)うがい薬
一般的なオーラルケア商品はドラッグストアでも販売されていますが、口腔内乾燥症と診断された場合、専門の医師に処方してもらいましょう。
うがい薬の目的は、口腔内を清潔に保つこと、細菌の繁殖を抑え感染症を予防する、口腔内の不快感を取り除くことなどです。
(5)口腔機能の訓練
舌の運動や食事の際に咀嚼(そしゃく)の回数を増やすことが、唾液分泌を促進することにもなります。あごや頬、くちびる、口角などを運動させることにより、口まわりの筋肉や骨格を鍛えることで、口腔機能の向上を促します。
(6)生活習慣の見直し
口腔内乾燥症は、日頃から塩分をとりすぎない、水分をきちんと摂るなど、手軽にできる予防法もあります。また唾液の分泌を促すような食品、梅干しやガム、レモン、酢を用いた食品などを積極的に取り、刺激物の摂取などは避ける様にしましょう。
口腔内感想症は様々な原因が影響して起こるものです。薬剤の影響などは医師との相談と薬剤コントロールにより軽減されることもありますが、加齢や筋力の低下、様々な疾患によって起こることも多く、原因となる病気によって異なった対処が必要となります。
またその症状は、単に乾いているというだけでなく、話しにくさや食事の嚥下機能にまで及びます。口腔内感想症でお困りの方にとっては、薬や症状に対する人工唾液なども有効ですが、生活習慣を見直すことで症状が軽くなることもあります。どうぞあきらめないでください。